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| 建て主の希望 |
現在、東京近郊を中心に住宅を作ってきているが、30代〜40代の若い方々のために設計をする事が多い。都心に家を建てたいとのご希望で私どもの事務所を訪ねてくださる方々の多くは、限られた予算の中で小規模の敷地を購入され、そこに工夫して、快適に住むことの出来る家を作ろうと考えている。
そこでの建て主のご希望としては"狭くてものびのびと暮らせる""家族が仲良く暮らせる""家族の気配を感じられる""家中が明るい"・・・・などなど、狭い敷地を工夫して、広く感じられる家族の団らんのスペースと、家族それぞれのプライバシーをある程度守れるスペースの確保を希望されることが多いようだ。
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| 住みやすい家 |
それらの希望に対する私の回答には、太陽光線の採り入れ方を工夫し、家族の集える場に面積のかなりの部分を割き、またフレキシブルな空間とするなどの内容が、これまで作ってきた多くの住宅に共通している。これらは、施主の希望を満たすための形であるが、私の建築造形へのこだわりや個人的な好みの反映でもある。
具体的に実施される住宅の工法は、予算などの都合もあって木造軸組工法(大工が中心になって作る、日本に昔からある工法)となる事が多い。これは垂直の柱と水平の梁によって構成される美しい構造である。装飾の嫌いな私としては、造形の可能性を広げつつも恣意的な表現となることを回避するために、太陽光線の導入の仕方を形に現すことで、造形の基本的要素として捉えている。
また、家族の団らんのための空間を広く取りながら、個室との間にあいまいな仕切りとしての引き戸を使用し、個室をあまり充実させない事が多い。それは家族と一緒にいる時間が、住生活ではやはり重要だと考えるからである。この点も、建て主の方と意見が合うことが多い。
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M氏邸1階:
和室より光庭を介して浴室方向を見る |
M氏邸2階:
食堂より光庭を介して居間方向を見る |
| 「こと」と「もの」 |
| このように、現代の家族の生活様式を考え、それに合わせて空間を作っていく設計の過程では、空間を自由に構成していく。構造事務所とも打ち合わせてアイデアを取り入れ、
邪魔な壁を無くしたり柱を抜いたりしながら構造を工夫して設計していく。つまり、住むという「こと」に合わせて、住宅という「もの」が柔軟に対応している或いは頑張っているのだ。今後も以上のような考えに基づいて、いろいろな家族の明るく楽しい家を作っていきたいと考えているが、最近ちょっとだけ気になることがある。
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| 住みこなす家 |
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それはアイデアを練っている時などにたまたま感じるのだが、生活とは何かを頭の中でじーっと考えていると、本当に私たちは「家の隅々まで明るい家を、邪魔な壁や柱の無い家を求めているのだろうか?」と。そんな自明に思えていた事に、ぼんやりとした疑いが湧いてくることがある。
例えば、家の片隅には薄暗い空間があっても良いのではないか? 部屋のどこかに屋根を支える柱が出ていても良いのではないか? フローリングが多少凸凹していても、土間と床に段差があっても良いのではないか? などと想像している。
生活情景の中の「もの」としての住宅は、快適な生活の容器として生活の背後に引っ込み邪魔をしない、といった存在感が希薄なものではなく、時に掃除の邪魔をし、うっかりと頭をぶつける「柱」として、また思索に耽りたい時に独りにしてくれる「薄暗い空間」として、住人に何かを語りかけ始めるのではないだろうか。
多少、住むのに手間が掛かっても、住み手におもねるばかりの家よりいい意味での存在感があるのでは、住み手にとって愛着が持てるのでは、地に足のついた生活ができるのでは・・・・などと想像を巡らせている。でも、その結論はまだ出ていない!
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住まいの話題[196]執筆者
■荒木 毅(あらき たけし)/ 荒木 毅建築事務所 |