■住まいの話題[199]:狭小住宅の楽しみ方
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「狭小」という条件
書店などで住宅雑誌のコーナーを覗くと、「狭小住宅」「ローコスト住宅」の文字を本当に多くみかける。都心において30代から40代の方々が戸建てのマイホームを建てようとすると、この二つのキーワードが最も重要になってくるものらしい。
数値で空間は測れない
この1年の間に私自身も、まさにそのキーワードに直面する住宅の設計に深く携わる経験をした。一つは自身の事務所の設計。もう一つは友人のインテリアデザイナーと共同設計をした知人の家の設計。自身の事務所は新築ではないが、古い長屋のリノベーションであり、もう一方は3.5m×10.0mという、まさにウナギの寝床のような細長い敷地に建つ狭小住宅である。

この二つの設計において最初に考えたのは、外側から想像のつく空間にならないようにしようという事である。間口が狭く、サイドへの開放が望めない条件の立地では、どうしても前面への開放性を求めがちであり、また空間のフレキシブル性を高めるために間仕切りの少ないスクエアな部屋割りになってしまう。

二つの建築では、狭いながらも空間を必要な機能に合わせて分割し、そのシーンに合わせた余白のような機能も盛り込んでみた。結果として、平面でみる一つ一つの空間は、数値としてはとっても小さいサイズの部屋となっている。しかし、実際に完成してみると、そこで生活する人の動線を徹底的にスタディして生まれる究極のジャストサイズに絞った空間は、とても快適に感じるものとなっていた。

例えば、知人の家(S邸)の設計では、バスルームとダイニングキッチンが同じ広さでゾーニングされている。およそ4畳の広さである。広めのバスルームと見るのか、狭いキッチンダイニングと見るのかと数値の上では心配したが、完成した空間を体験するとそのどちらでもなかった。ちょうど良い空間なのである。どちらも住人が生活をするのにとても心地よいと思える空間になっていたのである。
S邸:リビングからキッチンを見る ツキシマハウス:自力施工風景
もう一つの我が事務所(ツキシマハウス)においては、ワンフロアが6坪程度しかない本当に小さな空間なので、スクエアさを消すために一本の柱を配し、それを取り巻くように小さな窪みを作った。この窪みの中に砂を敷き詰めている。これは事務所をシェアしている友人のアート作品のステージでもあるのだが、その箱庭を中心に動線や配置が制限され、結果として、空間のヌケのような装置となっている。
自分自身を設計しよう

これらの具体例は誰にでも当てはまる効果とはいえないので、今すぐ家を作りたい人々が参考とするものにはならない。けれど、家を建てる際に、部屋の大きさ(畳数)ばかりに気を取られ、まるで答えが一つしかないパズルを解いたような狭小住宅となってしまわないようにする効果的なヒントにはなるのかもしれない。数値やその後の家族構成の変化を恐れ、インテリアは家具などで楽しめば良いなどと思わないで、自分の身体感覚や行動パターンをじっくり考えて、空間をめいっぱい有意義に使って家づくりを楽しんで欲しい。

都心における狭小住宅の平均面積は、ワンフロア10坪、3層積み上げの全面積30坪程度というものらしい。でもよく考えると、3層積み上げの建物の平均的な高さが10mならば、約1000m3もの空間を独占できるのである。その1000m3もの空間をただノッペリと作るのは、本当に味気ないものだと思う。

建築家と住宅を建てる場合、人にもよるが、約3ヶ月〜半年近くかけて設計期間を設ける。その間、建築家と共に自分の生活パターンや趣向を真剣に考えてみるのは本当に楽しい事である。最後は自分の観察学習のようなものになり、ドアの開け方や椅子の座り方なんてことも気になりだし、家づくりを通して自分自身がよく見えてきたりする。設計する私自身も、誰にでも合う家ではなく、その住人にピッタリとくる、ワンオフな住宅を目指したいと考えている。

住まいの話題[199]執筆者
■武田 ゆう子(たけだ ゆうこ)/ 武田建築アトリエ

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