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| 住まいをローコストで造る技術情報を設計者が持っていることは、あまり知られていない。ここでは、その一例を述べてみたいと思う。 |
| F邸のローコスト化の取り組み |
| 30坪の敷地に、5人家族の住まいを建てる。予算は全てを含め2000万円。設計のコンセプトは「家族で共有する快適空間と、共有空間の内に各自の居心地の良い場を設ける」。提案は、在来工法木造2階建て、延面積38坪(屋根裏部屋含む)の規模です。居間に大きな吹き抜けを設け、中庭と大きな屋根裏もある。本来、このような遊び空間は予算のない住まい造りの設計には取り入れない方法だ。それに加えて、外壁仕上げにモルタル塗の通気工法を取り入れたり、内部仕上げに無垢板を使用したりと、コストアップの要因になる仕様になっている。予算的に厳しい工事を完成するには、今までのように材工一式で工務店任せにしないで、設計者自身が材料の仕入れルートと職人の人選をして低予算化することが重要と考え、そのことを建築主との事前打ち合わせで了解を得た。
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| 仕入れルート |
| 今、木造の主体構造は杉が良い。国産材の中でも安価で赤身部分を使えば強度も強く、建築の材料としては申し分ない。産直は安いが、資材置場や受取り等、後のフォローが難しい。いろいろ検討した結果、以前取引のあった埼玉の杉材に強い材木屋さんに行き着いた。木造在来工法では、一般的に、建築工事費の中で木工事の占める割合が約35%と最も高い。今回はそこに焦点を当て、板材から構造の梁・土台まで、全ての木材を杉材にした。杉材は乾燥技術が難しく構造材に不向きと言われるが、赤身の部分は桧にも劣らない強度を持っている。そのため、材料費が約50万円以上安くなったと思う。
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| 構造材の杉梁を露出した家 |
LDKと中庭が一体化した家 |
| 職人と管理技術者の人選 |
| 職人の人選については、まず、過去に事務所の仕事に何回も関わり、賃金が安くしかも責任を持って良い仕事をする人達を指名した。選んだ職人を管理技術者に紹介し纏めてもらう。管理技術者(工務店)は、工程ロスが許されないローコスト工事にあっては最も重要な役割を果たすため、今回は職人からの信頼も篤いベテランの管理技術者を選んだ。設計者の中には、中間省略と称して管理技術者を立てないで工事をするケースがあるが、それは間違いだ。
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| ローコスト化の内容 |
ローコスト化を実現した具体的な内容として、材料面では以下の点を挙げることが出来る。国産材の杉を生産から販売まで手掛ける材木店を、工務店が安く購入できるように紹介した。木材は構造材から板材まで、材木店の規格品を調べ、部位別に経済設計した。2階床を厚板(無垢の杉板)で仕上げ、下地根太を省き構造を単純にして大工手間を減らした。特殊な材料は避け、職人の使いなれた材料を組み合わせた。
また人件費や什器や建具などについても幾つか具体例を挙げることが出来る。見積もりを取って安くて信頼できる職人を指定。システムキッチンと食器戸棚は展示品を安く購入。洗面化粧台は手造りの安価な物。居間の大型サッシは機能を損なわず省力化。造り付家具は大工工事の中に組み込み、扉を建具工事で作った。オリジナルな内部建具(ポリカ板)は無駄の出ないよう建具枚数を合わせた。さらに、出来る所は自分達で仕上るセルフビルドを随所に取り入れた。
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| ローコストにするための心得 |
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このように、設計者にとってのローコスト住宅とは、良い設計をして図面を書く事で終わるのではなく、人脈を使い、足も使う。また、建築の生産システムを理解していないと難しい。私は身の丈にあった住まい造りが好きだ。多くの人に良い住まいが提供できるよう、1000万円住宅の開発に取り組んでいる。無理なく造って、快適に住まう。予算に合わない要求や単なるわがままと思える要求をする人は、設計者の目指すローコスト住宅は無理だ。依頼者にはそのことを理解して頂かないと、パートナーにはなれない。
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住まいの話題[201]執筆者
■山城 正幸(やましろ まさゆき)/ 株式会社 マット設計 |