■住まいの話題[202]:家族にとっての居間とは?
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居間は変わりつつある
最近の住宅の設計で、家族にとって居間はどう在るべきか、ということをよく考えます。現代のインターネットや携帯電話などによるコミュニケーション手段の急速な変化が、人と人との関係に大きな影響を与えているからです。また、家庭内においても、従来型の家族を介しての社会との接点がより個人化されて、生活スタイルにおいても大きな変化が現れ始めているからです。

このようなネットワークの便利さや個人化は、子供世代の昨今の事件のように、知らないうちに危険な面までも家庭に持ち込んでいます。しかも、これまでの家の間取りではかたづかないような、様々な変化、例えば、住戸プランの一般解であるようなマンションのプランにも顕著に現れてきています。それは、玄関を入って、個室間の廊下の突き当たりに、南に面する居間があるという従来のプランではなく、各々の個室から直接外廊下に出られるようなプランや、居間から直接共用部分に出られるようなプランなどにうかがえます。
居間から家族が消えた
欧米のような個人主義を伝統とする国では、個人のプライバシーが重視されるので、皆が顔をあわせる居間(リビングルーム)にはそれなりの意味があります。一方、日本では、個室もなく家全体が居間のような時代が長く続いていました。戦後すぐには、都会の住宅に「茶の間」という食事・団欒・勉強部屋・就寝・客間にもなるような多目的空間が存在し、その後の洋風化により、日本でも居間という名の部屋が登場してきました。

テレビの置かれた洋風の居間には、テレビがまとめ役となって、家族が顔をあわせ団欒する光景がつくられました。しかしこの空間も経済成長以後、父親の帰宅は遅く、子供は塾通い、誰もいない居間にソファーだけがあるという殺伐とした場になってしまいました。
藤沢の家:スキップフロアの吹き抜け空間 桜台の家:居間間をつなぐ外部空間
現代みられる、部屋数重視と個室化の傾向は家族をITの普及と共にますます個人化しています。一つ屋根の下に住んでいる多くの家族を家づくりの中でどう結びつけるかということや、家の間取りと造り方が家族に少なからず影響を与えるということを、もう一度考え直す必要があるのではないでしょうか。
居間の在り方はアイディア次第
では、家族のための居間とはどう在るべきか、その参考となる事例を二つ紹介しましょう。一つは「居間を文化ゾーンにする」例(藤沢の家)です。この家では、スキップフロアがつくる吹き抜け空間が主役となります。居間をただソファーを置くだけの部屋にせず、ホームコンサート会場や趣味のギャラリーに変化させるのです。大きな階段は客席に変身できるし、ロフトは天井桟敷き席となります。

もう一つは、「二世帯の間にアウトドアリビング」を設ける例(桜台の家)です。増築で既存の居間と新しい居間をつなぐ外部空間を緑の森を借景とする場所に配置することで、親子世帯とソフトなつながりを演出する外部のリビングとなります。
居間から家族を考える

たしかに、居間という空間の造り方だけで、家族のコミュニケーションや生活が良くなるわけではありません。「居間を中心とした幸せ家族」といった表現は、単なるノスタルジックなものなのかもしれません。しかしながら、同じ家の中に住む家族間の安心感や癒しが、今回の中越地震で被害にあわれた家族たちのように、プライバシーを強く求めるという行動につながることも事実なのです。

家は家族の状況が変わるたびに建て直すわけにはいきません。同じ家を変化や成長に応じて住みこなしていくためには、居間という場所を柔軟に変化できる空間にしなくてはならないでしょう。家族にとっての居間が、より積極的な意味を持つ空間になるよう、しっかりと考えていきたいものです 。

住まいの話題[202]執筆者
■大沢 悟郎(おおさわ ごろう)/ (株)TOS計画工房

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