■住まいの話題[210]:お施主さんとの関わり合い
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はじめの一歩
住宅づくりのお手伝いをする人々は世の中に星の数ほどいます。そんな中、神様のいたずらか何なのか、様々な縁でお施主さんと建築家との出会いが生まれるのです。この最初の出会いこそが、とても重要です。つまり、お互いが感じる第一印象が大事だと考えられるからです。

住宅をつくろうとするお施主さんと、そのお手伝いをする建築家が最初に会った際、この人に住宅の設計を頼みたい、この人の住宅を設計したい、とそれぞれが相手に対して好感を抱いた時、家づくりは、最初の一歩を踏み出すのです。
大切な"材料"
人はそれぞれ好みや価値観が違います。それらが具体的な形となって現れるものが建物です。その中でも、好みや価値観がもっとも顕著に表現される建物が住宅であり、またそうあるべきだと考えます。その意味で、住宅はとても私的なものだと言えます。

住宅の設計が始まると、お施主さんと建築家の打合せ回数は必然的に増えていきます。顔を合わせて話合いを重ねる度に、建築家はお施主さんの好みや価値観を徐々に理解していきます。この過程を経て明確になったお施主さんの「価値観」が、住宅設計では欠かすことのできない大切な"材料"となるのです。

料理の世界で「材料を活かすも殺すも料理人の腕次第」とは良く言ったものです。建築の世界も同様で、"材料"を上手に活かせる建築家こそが、お施主さんを満足させることが出来るのです。
リビングルーム1 リビングルーム2
想いを胸に
"材料"が入手出来ると、設計はいよいよ佳境に入ります。後はお施主さんの想いを、どこまで実際の形に反映させることが出来るか否かが問われます。でも、この段階は要注意です。本来の設計の意味を履き違えて、過ちを犯してしまう建築家が多々いるからです。設計をしているうちに、お施主さんの私的なものになるべきはずの住宅を、いつのまにか建築家の私的な作品にしてしまうのです。

「建築家に住宅の設計を依頼したら、好きなようにされてしまった」という話をよく聞きます。これがその例に当たります。この種の話を耳にする度、「私は違います!」と言いたい。では、なぜ過ちが起きてしまうのか、それを考えると、原因は、建築家自身にあるように思われます。技術力があることと、お施主さんの信頼を得ているということから、本人も知らないうちに傲慢さが出てしまうのではないでしょうか。

私は、この過ちを犯したくないのです。お施主さんの想いを胸に秘めながら、自分の気持ちが突出しないかたちで設計するよう心掛けています。なぜなら、お施主さんのお金を使って、自分だけが満足するものを作ってはいけないと思うからです。

依頼してくださったお施主さんとの共同作業の「結晶」、それが私の設計する住宅です。写真に示したのはその結晶の例です。
忘れない
「住宅作家になるということは、偉そうに空間を語る前に、最低限、お施主さんの希望に応えられることだ」と恩師に教わりました。自分で設計事務所を開設し、実際に住宅を設計するようになった現在でも、師に教わったことは忘れられません。いや、忘れないよう日々努力しています。忘れると、最初に築いたお施主さんとの信頼関係を壊してしまう恐れがあるからです。
住まいの話題[210]執筆者
■横塚 敦(よこつか あつし)/ 有限会社 スタジオアテム

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