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| 施主とのデート |
住宅を建てようとしている方、また住宅に関心がある方に言いたい。住宅雑誌を見るのもよい、住宅展示場に行くのもよい、建築家の建てたオープンハウスに行くのもよい。でもここでは「江戸東京たてもの園」へ足を運ぶことをお勧めする。
先日、施主が是非行ってみたいとのことで、東京の小金井にある「江戸東京たてもの園」へお供することとなった。私も恥ずかしながら、前川国男(建築家1905-86)の自邸や堀口捨己(建築家1895-1984)の処女作があることは知っていたが、なかなか行く機会がなかった。今回、施主と行くことで同じ住宅・空間を共に過ごし、今後のコミュニケーションもスムーズにいくであろうと考えた。
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| 古きよき住宅のいろいろ体験 |
「江戸東京たてもの園」は、ご存知であっただろうか。ここは、建築を勉強する学生なら一度は行くような場所で、また日本の古い文化を知るために海外の方も多いようだ。屋外型の園内には古いものでは江戸時代、一番新しくて1950年頃に建てられた当時の民家や邸宅を20棟以上見ることができる。それぞれが、その時代や文化を反映した建物であることは間違いなく、とても興味深い。しかし、それらを歴史的な観点で見学するのもよいと思うが、あまり難しいことは考えず、住宅、空間として体験することをお勧めする。
もしかすると、江戸時代に建てられた茅葺屋根の民家や元政治家の大邸宅を見て、自分達の住空間とはあまりにもかけ離れていると思うかもしれない。でも、光の入り方、部屋の明るさ、空間のボリューム(広さと高さ)、ガラスがない時代の雨戸と縁側の関係等々、自分にとって気持ちのよい空間であるのかどうかを、感じてみるのもよいと思う。また空間だけでなく、家具を見ることも忘れないで欲しい。細かなところまで配慮されているものも多くある。
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前川国男邸の居間(サロン):
住宅は大きくなくとも豊な空間を
持ち得ることを体験して欲しい。 |
高橋是清邸の2階十畳の間の廊下:
廊下と呼ぶにはもったいなく、
十畳の間に外部への広がりと陰影をもたらす。 |
| 街並み・外観 |
また、昭和初期の関東大震災の復興期に建てられた看板建築を多く見ることができる。移築されたものであるから、決して当時の状況が全て把握できるわけではないが、その時代の表現の仕方(流行)で、商店として街並みや周辺に対して意識して建つという姿勢は、今の時代においても、忘れてはならないものだと感じて欲しいと思う。
この看板建築については、内部が公開されていないものが多く残念であったが、図面を見る限りではとても合理的で、現在の狭小住宅にヒントを与えるものがあるかもしれない。
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| おまけ |
こう書いてくると私を東京都の手先ではと思われるかもしれないが、ここを訪れて大変残念だと感じることがあった。施設内には、ゆったりと気持ちよく食事やお茶ができるところがなかったことである。2ヶ所ほど古い建物内部を利用した飲食店があり、そこまではいいのだが、この寒い冬に暖房さえなかった。気持ちのよいものを見たあとは、その余韻に浸りながら、お茶でも飲みたいものである。
「おまけ」と書いたので、大切なことでないように思われるかもしれないが、住宅も含めて建物というのは器だけでは成り立たない。使い方ひとつで気持ち良くも悪くもなる。住宅は建った時が終わりでなく、メンテナンスなども含めて住みこなしてこそ、よき住宅だと私は思う。
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住まいの話題[220]執筆者
■木内 厚子(きうち あつこ)/ Studio8/スタジオエイト一級建築士事務所 |