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| ある設計の依頼 |
| 数年前になるが、外断熱の住宅を造りたいというAさんから設計依頼を受けた(この外断熱とは、外張り断熱工法の木造住宅を指す。以下全て木造住宅の話である)。「たくさんモデルハウスを見てきたが、外断熱工法は絶対に暖かい」という。Aさんが見て廻った外断熱工法の家についてヒアリングを重ねながら、Aさんの希望に沿って設計を進めることになった。
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| 外断熱の性能 |
| 設計内容がほぼ固まってきた頃、熱性能について、PCでシュミレーションしてみた。すると意外にも、内断熱工法より性能が劣る数値が出るのである。なぜか? 理由は二つ考えられた。一つは、基礎部と小屋裏が熱環境上室内に属するため、断熱面の面積が内断熱工法より大きくなり、外部との熱交換量が増えるためである(概念図参照)。もう一つは、外断熱では工法上あるいは法規上の制限、その他の理由で断熱材の厚みに限界があるため、面積当たりの熱性能値を上げにくいからだ。
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| 気密工事−外断熱の利点 |
| 気密工事については施工しやすい工法といえる。家全体を外側から、キャベツをラッピングするように、ぐるっと包み込んでしまうため、電気配線や筋交い等で気密ラインに隙間が出来やすい内断熱工法に比べて空隙が出来にくい。しかし、隙間がどの程度空いているかを示す係数C値が、基準値や目標値を上回っても、全体の熱性能が著しく向上するわけではない。気密性能は、室内が暖かく感じられることに貢献しているが、これだけが暖かさの要因ではないようだ。では、暖かく感じる理由は他にもあるのだろうか。
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| 木造の外断熱(外張り断熱)と内断熱工法比較:概念図 |
朝鮮のオンドル:基礎下の炊き口が見える |
| 温突(オンドル)をもつ家 |
| 朝鮮の古民家には「温突(オンドル)」が設けられていることが多い。オンドルとは、床下で薪を炊き、その暖気で直上の専用室の床板を直接暖める一種の空気式輻射床暖房である。気密は工夫されているが、現代の高気密住宅の性能に達するものではないだろう。この暖房は、床板から専用室の空気を暖めることにもなるが、輻射暖房として、身体に対し直接暖かいと感じさせる輻射効果と伝熱効果にポイントを置く装置であるといえる。 |
| オンドルの体感効果 |
| Aさんの家に話を戻す。内断熱工法では、床下が外気に面するため、どんなに床断熱性能を向上させても、1階の床表面温度が室温より低くなる。一方、外断熱工法は、床下基礎内が熱環境上、室内に属するため、1階の床面の表面温度が下がりにくい(概念図参照)。外断熱の家では、室内暖房の熱エネルギーが床下空間にも伝わる。また、その熱が基礎コンクリートに時間をかけて蓄熱される。この床下空間の熱によって、オンドルのような体感効果が階上に現れていると考えられる。Aさんが主張する「外断熱の方が暖かい」理由は、気密化の貢献とともに、床下の基礎空間が生み出す熱の効果が大きな要因であると推測される。
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| 夏にも使えるオンドルを造る |
| 実は、Aさんの家を設計する以前から、外断熱的な工法を、一部ではあるが幾度も採用していた。CRESCENT
WALL HOUSE では、内断熱工法で断熱性能を十分に確保した上で、高床の床下空間をオンドル的空間として暖房装置を取り入れた。しかも夏場も有効に働くように換気開口も備えている。施主に話を聞くと、住み心地は良いようで、特に冷暖房の低いランニングコストが喜ばれているようだ。 |
| 竣工後のAさん |
| Aさんからは今年も年賀状が届き、「FF一台でとても暖かいです」と満足されているようだ。設計者も何はともあれ、喜んでもらえるのが一番嬉しい。ここでは、木造外断熱の熱性能に絞って話を進めたが、他にも熱容量と結露対策の問題、冷暖房計画、防音等が、断熱工法に関連する事項であることを最後に述べておきたい。 |
住まいの話題[223]執筆者
■米田 正彦(よねだ まさひこ)/ (有)ATELIER FOLIUM 一級建築士事務所 |