■住まいの話題[226]:住宅に事務空間が必要になってきているようです
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事務作業スペースの要望が増えてきました
最近、建て主からの要望に新しい事柄が付け加わってきました。それは住宅に事務スペースが欲しいということです。もちろん、建て主の生活は様々ですから、いろいろな形でその希望が語られます。

昔からの書斎を要望される方も多くいますが、それとは別の、日常生活の延長にある事務スペースを希望される方が増えています。仕事で原稿等を書かれる方は、当然、書斎や書庫を要求されます。しかしながら、従来の閉じこもるタイプだけではなく、半分居間に開いたものの要望が多くなっているように感じます。また、一目で見渡せる本棚を望まれる方も多くなってきました。
ワークスペースという名の事務スペース
ここで書こうと思っているのは、それらの書斎ではなく、かなり多くのケースで主婦(主夫の場合もあります)専用の机が求められていることです。それは掃除洗濯の家事とは切り離された、事務処理という新しい家事、あるいは趣味の場です。そこには、まずファックス電話が置かれます。そして料理の本をはじめとして、名簿、予定表、様々な本、ファイル類が置かれます。

さらに、パソコンが家庭内に入ってきました。パソコン本体はノート型でしたらいろいろ移動できるとしても、定位置が必要になってきます。そうするとプリンターが必要になってきます。当然のことですが、文具類もここに集中してきます。レターケースが置かれ、サイドキャビネットが必要になってきます。もうこうなってきますと、それは確実に事務スペースです。なかなかよい名称がなく、私はとまどいながらも「ワークスペース」という名称を図面に書き込みます。
10年前はじめてつくったワークスペース:
台所と並ぶ
吹き抜けを通して居間とつながるワークスペース:
家族で利用
テレビが入ってきた時を覚えています
ちゃぶ台を中心にした茶の間が「居間」だった時代に、テレビが住宅に入ってきました。それはまさに置き場所に困るしろものでした。床の間からスタートして、いろいろ引っ越した末、いつの間にか居間・茶の間の角が定位置になってきました。

同時に、どう使ってよいか誰も分からないままつくられてきた「居間」という名の洋室が、テレビを見る部屋としてその位置を確立しました。生活の変化により、居間という一つの部屋がリビングダイニングという一続きの空間になり、テレビのある空間もそれなりの落ち着きをみせてきました。最近の薄型テレビの登場で、やっと異物感がなくインテリアデザインに取り込むことができるようになったといってもよいでしょう。
ワークスペースのある風景
今、求められているのは、生活の中にさりげなくある事務空間のたたずまいです。使用者がキッチン使用者と重なっていることと、これまで食卓を事務作業に当ててきたことから、場所はキッチンやダイニングに近い方が好まれます。食事の時に片づけていた事務作業の道具置場として、あるいはそこで作業のできる本格的な事務スペースとして、そのデザインが建築家に求められています。

テレビは自分から存在感を少なくしてくれました。しかしこの場合はそうはいきません。今後起こる変化は誰も予想できません。唯一の解決方法は、住宅そのもののデザインを考え直し、住空間の中に積極的に事務スペースを取り込むことです。

最後に予言を一つ。これを読んでいるあなたが年を取った頃には、体を優しく包み込み、高さや背もたれの角度その他何でも簡単に変えられ、しかも移動が容易なキャスター付きの椅子、そう「事務椅子」が食卓にセットされている日がきているかもしれません。まだ抵抗のある風景ですが、誰か優秀なインテリアデザイナーが、それを見慣れたものにしてくれる日はすぐそこだと思っています。
住まいの話題[226]執筆者
■遠藤 泰人(えんどう やすひと)/(株)空間スタジオ

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