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| チョコビル |
1年前、私も家を持ちました。印刷工場だった4階建ての建物を購入しました。東京オリンピックの年にできたので、築40年たっていますが、RCの躯体はとてもしっかりしています。広さも申し分なく、延床面積は280uあります。
購入価格は、土地が26坪付いて2〜3LDKの新築マンションと同じくらいの値段でした。印刷工場だからなのか、なかなか買い手が付かなかったようです。それをリノベーションして、1階を事務所、4階を自宅として使用し、2階と3階は人に借りていただいています。改装のための予算が少なかったこともあり、内部はペンキで真っ白に塗っただけ。水周り以外、ほぼ印刷工場のままで住んでいます。もともとチョコレート色の建物だったので、妻が"チョコビル"と命名しました。
リノベーションやコンバージョンということが当たり前のことになりつつある今、印刷工場を改装して住んでいるといっても、それほど驚かれる方はいません。でも、床も壁も天井もコンクリートの印刷工場のままだと、住み心地は大変なんじゃないかと想像される方が多いようです。もしかしたら大変かな?と、ちょっと心配でしたが、意外と快適です。人が働いてお金を生み出すための大切な場所でしたから、過酷な環境のはずはないのだと、1年住んでみてそれを実感しました。
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| 住居も工場も同じ |
| 20世紀のモダニズムでは、住居も工場も完全に同じ論理で設計されました。18世紀にイギリスで産業革命が起こり、それによって新しい建築としての「工場」が生まれました。モダニズムとは「工場建築」そのものの概念でした。そして20世紀になって、住居とオフィスビルも同じ概念でデザインされたのです。モダニズム建築の概念とは、要するに、"ユニバーサル・スペース"のことです。それは、できるだけ邪魔な物をつくらず、どんな風にでも自由に使える空間です。最小限の柱・床・屋根だけの建築に近く、壁さえもつくらない。 |
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| チョコビル(自邸)の改装前の外観 |
チョコビル(自邸)の内部 |
| 住居も工場も、建築空間自体に違いはありません。どちらも「できるだけ何もない空間」にしておいて、インテリアをどうコーディネートするかがその違いになります。だから、20世紀の建築家はユニバーサル・スペースを住宅として使う人のために、家具をデザインしたのです。つまり、工場が住宅として住みやすいかどうかということは、ユニバーサル・スペースが住みやすいかどうか、ユニバーサル・スペースが好きか嫌いかという問題だと思います。 |
| ユニバーサルとオンリー・ワン |
私は、どちらかというと、ユニバーサル・スペースが好きです。使い勝手がいいし、部屋を細かく区切らないので気持ち良い空間となるからです。事実、自分の設計でも、まずはできるだけユニバーサルなワンルーム空間を提案することが多い。モダニズムの巨匠建築家のように、オリジナル家具をつくる機会はまだありませんが、建物の設計だけでなく、家具やカーテンや照明など、インテリアのコーディネートも提案しています。
それとは対照的に、お風呂やキッチンなどの水周りスペースと、テラスや庭などの空間に対しては"オンリー・ワン"にこだわっています。水周りの設備は簡単に動かすことができません。ユニバーサルにすることもできません。それなら、思い切り気持ちの良い空間にするべきだと思っています。
自邸でも、お風呂だけは贅沢をしてガラス貼りにしました。浴槽もいろいろなショールームに行って、実際に浴槽の中に入ってみて、自分に一番しっくりくる形の浴槽を選びました。それがベランダの掃出し窓に面して置かれたイタリア製の洋バスです(高価なものではありませんが)。
夏はベランダに面した窓を開け放し、露天風呂気分でゆっくりお風呂に入ります。まさに至福の時間です。これも、オンリー・ワンへのこだわりがもたらしてくれた効果の一つといえるでしょう。
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住まいの話題[228]執筆者
■永山 明男(ながやま あきお)/ 永山明男建築設計事務所 |