■住まいの話題[229]:立体最大限住宅
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家の中の無駄
私たちの住宅を詳細に眺めてみると、多くの部屋が有効に活用されていないことに気づく。タンスの置き場となって納戸化した和室。ほとんど就寝時にしか利用されない子供部屋。ただ通過するだけの玄関。二度と使われることのない引出物で充填された押入。物が溢れたリビング。規模が小さいことに加えて、間取りも使い方も悪いのだから、狭く感じて当然である。

家をつくるとき、土地と予算は限られる。仕様をそのままに規模を大きくすれば、建設コストは跳ね上がる。仕様を落として規模を大きくすれば、たちまち性能の低下を招く。だから、広々させるためには、家の中の様々な無駄を見直して、限られた室内を有効に使うことが必要になる。
与条件の見直し
まず、建築主がやるべきことは、物品のリストをつくって不要なものを整理することだ。物量を把握せず、「収納はともかく沢山欲しい」と要望を出すのは簡単だが、収納があればあるほど室内は狭くなり、建設費はその分高くなる。生活に最低限必要な物は何なのか、改めて考える必要がある。

次にやるべきは、間取りの中の無駄探しである。一日の中で、廊下や玄関を使う時間は極めて短い。こういう部分に専用の空間を与えていては、スペースはいくらあっても不足する。子供部屋は3畳もあれば十分だ。専用のコーナーということでもいいだろう。先入観にしばられない柔軟な発想で、スペースの大きさや使い方を考えることが必要だ。

利用頻度の低い空間は徹底的に排除する。その分、長時間いる共用部には、大きな空間を割り当てる。一つのスペースを複数の用途で使うのも良い。不要な間仕切りは極力つくらない。そうこうしていると、平面は次第に間仕切りの少ないワンルームの間取りに近づいていく。
北面の大窓 スキップする薄い床
断面の無駄
意外に気がつきにくいのは、断面の中の無駄である。どんな間取りにでも対応できるように、住宅の天井裏には、通常かなりの余裕が設けてある。一般的な住宅では、2階の床の厚みは40〜50cm。三角形の屋根裏にも、巨大な空間が眠っている。住宅の断面は、まだまだ工夫の余地がある。

まず、屋根裏をなくすことを考えたい。屋根面で断熱し、その上部に通気層を確保すれば、屋根裏空間は必要ない。室内は天井を張らないのもいいだろう。室内はそれだけ広くなる。

床を薄くするという荒技もある。写真で示した住宅は、特殊な木造の床をもつ。仕上げを合わせても、厚さはわずか15cm。床が薄くなった分、室内の気積は大きくなる。30〜40坪の住宅で、高さが一律30cm節約できるなら、およそ4〜5坪分の床面積が増えたのと同じだけ、気積が増える計算になる。コストに換算すれば、実に2〜3百万円分の空間だ。

この住宅では階高を南北で少し変えてみた。部屋の規模に応じて天井高を変化させ、空間を立体的に活用しようというアイデアだ。書斎や浴室など、小さい部屋は天井を低くして、高天井の部分は、主階とロフトで二重に使う。
空間の魅力
スキップすることで階の意識が薄れ、全体はゆるやかに繋がって、どこにいても家族の気配が感じられる。北面の大窓からは柔らかい光が射し、ずれた床の間から、北側の奥の部屋まで陽が入る。無駄がないだけでは不十分。空間にはそんな魅力が必要だ。

外壁と屋根が決まれば、自ずと内部の空間が決まる。要はこの立体をどのように使うかという問題だ。家の中にはまだ眠っている空間が沢山ある。その無駄を見直して、活動のための空間を充実させるよう。
住まいの話題[229]執筆者
■飯塚 豊(いいづか ゆたか)/ i+i設計事務所

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