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| 設計者の仕事とは、難しい仕事であると最近思っている。事務所をはじめて早2年が経とうとしている状況の中で、竣工した物件もあれば、企画段階で終わってしまったプロジェクトもある。とにもかくにも、人に会って話をしなければ仕事は進まない。星の数ほど人はいる・・・・。という具合に人と会っていると、自分の常識とは一体なんだったのか?と考えさせられる。 |
| 人間1:敵は近くにいたかも・・・ |
初仕事は、自邸(笹塚の家)であった。打合せの相手は、自分と同僚そして自分の親。コストを下げるために分離発注をし、自分たちの可能性を試してみた。工期は大幅にずれ込んでしまった。私としては、自分の家なんだし、分離発注なんだし、時間がかかってもしょうがないと思っていた。
親は違っていた。「設計者なんだから責任を持って約束の引渡しに間に合わせなさい」と怒られた。情状酌量の余地はないのかしら? 言われたことは設計の基本。親じゃないか、私の苦労もわかってよ。でも真摯に受け止めよう。
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| 笹塚の家:西側外観 |
笹塚の家:2階リビング・ダイニング |
| 人間2:おいしい話に裏があるかも・・・ |
この2年間に、いわゆるネタになるようなおいしい話が幾つかあった。土地が広くて工事費があって、その上、見積りが合わなかったらその差額は払いますといってくれた神様のような人が現われた。あたかもすぐにでも設計が始まるような雰囲気、しめしめ楽しいことが出来そうだ。今夜は祝杯を上げよう。
さてさて、お施主様に電話でもして具体的に設計を進めよう。えっ、この電話は現在使われていないっ、一体何が起こっているのかしら? いやいや、あせって電話番号を間違えただけだ、気を取り直してもう一度。あれっ。この人は何のために、私たちと話をしていたのだろう?? こういう人もいるんだ、肝に銘じておこう。
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| 人間3:理想と現実 |
家を建てる人達には、夢があって理想がある、そして現実を目の当りにする。この理想と現実のギャップを出来るだけ埋めていくのも設計者の仕事。社会人としてこの人はきっと立派な人で、話を聞いていると人徳者のようだし、設計者の仕事に理解もある。その上、正義感も強そうだ。仕事を進めても一緒に楽しくモノをつくれるに違いない。
設計が煮詰まってきた。あれっ、この人の人格が変わってしまったぞ。金額が合わないのだったら、がんばってあなたの理想に近づけることを考えるから。先走らないで、最善の結論をだそうよ。そんな風に言わなくてもいいじゃない、限られた予算の中でこっちは一生懸命やってるのに・・・。理解してもらえないのかしら? そんなに疑わないでよ。
一生に一度であろう大きなお買い物、あきらめないでがんばりましょう。さあ、これからが設計者の仕事。お施主様を説得するぞ、施工者さんを説得するぞ、調整するぞ。でもこっちを信頼して任せてくださいね。いろいろ不安なのも理解出来る。私も自分の家を設計したときに、専門家なのに素人のように冷静さをなくした経験もある。家を建てるのには気力・体力・忍耐力が必要。最も重要なのは人を信頼する勇気。設計者はその信頼を糧にその人のために家を設計する。お金を出しているのはお客様、十分理解しています。そのお金で最大限の、いやそれ以上のことをお客様に還元したい。
設計者は、常に誰かのためにモノをつくる、人の財産を預かってモノをつくる。努力はしているつもり、分かってよ。といいながらも、最終的に人は人を信頼して物事が成り立つことは、皆さんご存知。社会に出て働いていると様々なことあるでしょう。途中の過程でいろいろあったとしても、信頼を勝ち取る努力をする。これも、設計者の仕事。
でも、世界の中心で私は叫びたい「設計者も人間である」と。皆さんのきつい一言にへこみながら、毎日生きている。 |
住まいの話題[230]執筆者
■中山 薫(なかやま かおる)/ FISH+ARCHITECTS |