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| 初期設定 |
| 「家」が竣工された時、それは住まいの完成ではなく、初期設定された段階である。そして、5年後、10年後、20年後、30年後、住む人の要望や生活の変化に「家」はどう適応していくのか? 人を家に合わせるのか? 家を人に合わせるのか?
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| 不確定なプログラム |
一般的な家族にとって、起こりうるであろうたくさんの事柄(または、起こらないかもしれないが)---結婚、出産、育児、幼稚園、誕生会、幼児教育、幼な馴染み、近所付合い、ペット、小学校、セキュリティー、井戸端会議、兄弟、スポーツ、クラス会、自転車、お稽古、才能、ホームパーティ、塾、中学校、部活動、親子の対話、試験勉強、高校、プライバシー、趣味、食事会、友人、音楽観賞、親戚付合い、受験、大学、独立心、恋愛、期待、臨時収入、サークル活動、留学、海外からの友人、自動車免許、夢、就職、転勤、独立、転職、二世帯住宅、孫、定年退職、余暇、病気、サイドビジネス、副収入、ゆとりの時間、バリアフリー、三世帯住宅、等々---どれも不確定なプログラムである。
家族や各個人の変化だけではなく、社会状況、経済状況、技術、嗜好の変化など、多くの不確定な要素に囲まれている中、本来は「家」も服を着替えるように変わっていくべきではないか? 少なくとも「家」は、住む人のもつ今後の可能性の障害になるものではなく、可能性に貢献する道具のひとつとしてあるべきものだ。「まさか子供がピアノに興味を示すとは思ってなかった」とか、「夫が地方に転勤になって、二重生活になるとは思ってなかった」など、よくある話だが。
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| evoの基本手法 |
| 進化する家「evo」は、夫35歳、妻35歳、長男5歳、長女0歳の4人家族のために、東京郊外の新興住宅地に計画された。このエリアでは区画整理が進行中で、周囲にまだ多く残っている畑や空き地に、新しいショップや住宅やマンションなどが次々と建てられ、日々景観が変わっている。この街もどこまで変化するのだろうか? |
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| evo-external view |
evo-internal view |
| 「進化する家」の基本骨格を形成するために、ここではまず法規によって規定される空間的範囲を、敷地に対する最大限の「空中敷地」とし、それを3.6m×3.6m×3.0m(およそ8畳間の容積)を基本単位とするグリッドで空間分割(=空中敷地の分割)した。そして、「長期構造体」=空中敷地を形成する人工地盤としての鉄骨グリッド、「中期構造体」=解体しやすい木造の床・壁・天井・屋根・各種フェンス、「短期構造体」=可動パーティションなど、3種の構造体を時間別基本エレメンツとし、進化可能な空間の構成を行なう。
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| フォーメーション(初期設定〜増築・減築・組み替え・空中敷地内転居など) |
初期の配置では、現在の家族構成および建築時の予算を総合的に考慮し、全48グリッド(16×3層)のうち18グリッドを室内、5グリッドを屋外テラス、9グリッドを車庫+ポーチ、2グリッド(+上部空中)を庭、2グリッドをサービスアクセスおよび設備スペース、残りを樹木のスペースおよび余白とした。この段階では、子供と親との距離を近すぎず遠すぎない関係に配置するとともに、立体的な視線や会話、セキュリティーにも考慮している。
そして将来は、嗜好の変化による仕上素材の面的交換やプライバシーフェンスの追加、さらには子供部屋の拡張、吹抜けの部屋、空中の離れ、エレベーター増設、多世帯住居、店舗併用住居など、空中敷地内における増築・減築・組み換え・転居・異プログラムの挿入などのフォーメーション変更により、「evo 」は、住む人や周囲の変化にともないさまざまに進化する。
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| 進化する建築 |
| 「evo 進化する家」で目指した住まい像=建築像は、住む人のイマジネーションを誘発し、それぞれの場面において与えられた空間を自由かつ大胆に演出できる場であり、その流動的表情(固定しないファサード)が、進化する建築の姿である。 |
住まいの話題[233]執筆者
■斎木 敬一(さいき けいいち)/ (有)スペースメニューラボ |