■住まいの話題[234]:現場は私のパートナー
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現場用語
私はある大手設計事務所に12年間勤めた。建築実務1年生のときは右も左もわからなかった。でも、現場に行かされた。現場って何だ?という状態ではあったが、とりあえず諸先輩方の行動を真似しながらこなしたつもりでいた。

現場打ち合わせの中で頻繁に出てくる、わからない「言葉」。打合せ用紙の隅に小さい字でその「言葉」を書いた。何も知らなかった私は、何も知らないくせに人に聞くのが恥ずかしく感じていたので、事務所に帰ってこっそりその「言葉」の意味を調べた。

そうこうしているうちに、その「言葉」が現場用語だと理解出来るようになった。現場が楽しくなってきた。そのころから私は、知らないことを知らないと言えるようになっていた。そしてその事務所を卒業、自分で事務所を始めた。
現場監理
現場監理は楽しい。何が楽しいのかというと、設計した2次元の図面が3次元になっていく過程が見えるので楽しい。その現場の中で大工さんや職人さんとコミュニケーションをとって、形にしていく。もう私は、分からない「言葉」が出てきても怖くない、ちゃんとその場で相手に聞くことができる。そうすると、現物を見ながら覚えるので、なかなか忘れない。

最近、ローコストの住宅(藤沢の家)を引き渡した。やっぱり現場は楽しかった。"インゴカク"、何だ? 今はもう知っている。次の現場ではあたかも知っているように使っている。現場は辞書より明確に言葉の意味を説明してくれる。これも「現場監理」の楽しさである。
藤沢の家:外観 藤沢の家:駐車場
現場監督
私は事務所をもう一人の人間と始めた。その人の自邸が事務所の処女作となった。コストのこともあって"分離発注"をした。つまり、設計事務所が主体となって工事の監理をするのだ。いつしか、私は現場監督のようになっていた気がする。

職人さんが尋ねる「サッシ取り付けはいつ頃はいれますか?」。ちょっと待ってくれ、毎日現場にいるわけではない。結局、工事工程表的なものを自分で書いた。現場監督は大変な仕事だということが体験でき、私は「設計監理者」であろうと決心した。
現場主義
何度も言っているが、私は現場が好きである。しかし、「現場主義」ではない。何でも現場で決めればよいとは考えていない。設計を進めていく中で、判断して納まりを現場まで持ち越すことは時々あるが、基本的には、設計段階で細かいところまでつめておきたい主義である。

とはいっても、多少の誤差等があって、現場で決めなくてはいけないことがたくさん出てくる。それがまた、楽しい。大工さんや職人さんの意見はちゃんと聞く、でも自分の意見もちゃんと言う。これには作戦も必要だったりする。

傍からみると、3mmか5mmの納まりの話で、大の大人が寄り集まって何を真剣に話してるんだよ、と思うかもしれない。この3mm、5mmが、現場監理の重要なポイントなのだ。現場で決めたことで"うーん"と思うところは、ちゃんともう一人のパートナーにお伺いを立てる。

私にとって現場は、人生のパートナーなのかもしれない。少し大袈裟かもしれないが・・・。
住まいの話題[234]執筆者
■盛 勝宣(もり かつのぶ)/ FISH+ARCHITECTS

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