■住まいの話題[235]:地域とすまい
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地域に生きる民家
かつて日本民家をこよなく愛した伊藤ていじ氏は、やがて民家は滅び行くものだと言った事は有名であるが、年々何処の民家も少なくなり、民家園の中に保存された物でしか見る事が出来なくなってきている。民家には、岩手の曲がり屋・信州の本棟造り・飛騨白川の合掌造り等、地域に密着したデザインで素晴らしい物が多い。

その地域において、何十年、何百年と工夫され受け継がれてきた物には、無駄な物が殺ぎ落とされ一種の結晶のような美しさと重みがあるが、そのままの形で現代の住宅として使用するには難しさもある。何とかして現代に活かして設計できないものかと思うが、それもなかなか難しいようだ。

近代以降、論理は均一化と均質化が追求され、建築では国際建築主義のもとに、世界の建築は日本であってもアメリカであっても、さほど違わない物が出来るようになった。

日本の住宅でも同じことが言える。全国各地のすまいが皆同じ物になり、地域の特徴が薄らいでしまった。ハウスメーカーの急速な台頭やTV等のマスメディアの普及なども影響があるかも知れないが、論理の中心に均一化がある以上、ある程度止むを得ない事態なのかも知れない。

以前、建築で使われる石はその地方の物を使用するのが当たり前だと、何かで読んだ記憶がある。土壁あたりでも日常的にその地方の物が使われる率が多かったようだ。全ての素材をその地域産で作る事は不可能であるが、私はこれらの意見に賛成で、出来るだけその地域性を出したいと、地域の特色探しに努めている。
無心庵:内観 八本の柱のある家:外観
設計の実例
私が設計したものに"無心庵"と言う別府の家がある。別府は温泉地だけでなく竹工芸品でも有名なので、すまいのどこかに竹を使って地域性を出したいと考え、居間の天井に竹を割った物を張り上げた。

信州の諏訪の家では、その地域の七年に一度のお祭りである「御柱祭り(おんばしらまつり)」の年に建てる事になったので、社に立てる八本の柱をすまいに引用して四角のブロックを二つ作り、それぞれの角に一本ずつ、合計八本の柱を立てた家("八本の柱のある家")として設計した。

他にも東北地方に建てた建物では雪囲いを取り入れたり、浜松の三方が原では戦場地をイメージした建物とした。全ての地域で、それぞれの特色を出せるとは限らないが、出来る限り地域に根ざした住まいであって欲しいと考えている。
敷地との関係
この敷地は不整形だとか、傾斜しているのであまり良い土地ではないと、よく言われる。私は、例え敷地が沼地であっても、そこにしか建てられない形があり、それが敷地の個性だと考えている。

傾斜している敷地では、敷地は全て平らだと認識されているため、ブルドーザーで平らにして建てたり、基礎や基礎束で高さを調整して平らにして建てたりする場合を多く見受ける。出来れば敷地なりに高低差を活かして建てた方が、その土地ならではの個性的な物が建ち、不自然な物にはならず、ある種の感動的な住まいになるだろうと思われる。

また不整形な敷地であっても、強引に四角い建物を建てずとも、不整形を利用して建てた方が面白い住宅が出来るのは間違いない。土地にハンデがあって地価が安い分だけ建築工事費にゆとりもでき、そんな敷地を買った事が、結果的に良い住まいを造る事になるだろうと思わずにはいられない。
住まいの話題[235]執筆者
■小林 英治(こばやし えいじ)/ 小林英治建築研究所

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