■住まいの話題[237]:答えはどこにある?
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クライアントとの出会い
有名建築家でもなく、また住宅メーカーでもない、つまりまったく知名度のない私のような人間にとって、ホームページなどを通じてコンタクトをしてくれるお客さんはとてもありがたい存在です。何かを感じて連絡をとってきてくれているとは思うのですが、そこにはかなりの幅があります。しかしその幅はネガティブなものではなく、こちらとしても相手が何を感じ、何を考えているのか楽しみでもあります。また建築家は何か新しいモノに挑戦しようという意欲を持っているので、それをきっかけに何を作り上げようかと考えるのも楽しいことなのです。
ないものを作っていくこと
打ち合わせでは図面や模型などを使って、計画案について話し合いをします。こちらは相手に期待されているであろうということ、または求められていたけれど、予算や生活の仕方、あるいは将来のことを考えるとやめた方がいいことなどを、なるべく砕いて話していくようにしています。その反応を受けて、案を詰めていくというのが私の設計の進め方で、いわゆる相談型です。

特に第一案というのはタタキ台になることが多く、結果的には私もクライアントも、当初想像していたのとはまったく違う着地点になることがあります。ないものを作るのだからそんなことになっても全くおかしくはない。ひと昔前の建築家のように「あなたはこう住むべきだ」とか「住まいとはこうあるべきだ」などと言う気は毛頭ありません。いろんなものを捨て去って住まいを作っていくのではなく、なるべくそうしたものを受け入れながら、シンプルでざっくりとした住まいがつくれればいいと考えています。
実物の空間をイメージするのはなかなか難しい 住宅コンペ落選案
住宅コンペ
しかし、ごくたまに、クライアントと話をしていて「?」 と思うことがあります。設計を依頼されたのはいいが、案をいくつ出しても基本設計がなかなかまとまらない。反応が悪い。ではと、次の案や新しい考えを提示しても、また元の案に戻る。それの繰り返し。いろんな案を見て納得したいと思うのか、あるいはできれば実物をみて考えたいというタイプなのかも知れません。私が設計をしない方がこの人のためではないかと思ったことさえあります。あとで理由を考えてみると、おそらくこういう方は、どこかに「正解」があると思っているのではないでしょうか。

そんな人が多いのか、世の中には住宅コンペなるものがいくつもあるようです。違う人間の考えたいくつかの案を見て、自分の方向を見極めようというのでしょうか。あるいは一人の人間に依頼することが不安なのでしょうか。しかし、客観的にチェックできる審査員がいない限り、コンペという言葉はあてはまらないだろうし、個人の住まいにコンペは向いていないように思います。そんなことを考えながらも一つだけ、とあるコンペに登録していますが、案を選んでおいて不安を隠さない依頼者の姿をみると、これでいいのかなと思ってしまいます。
さて、答えはどこに?
前に勤めていた事務所の所長が、あるセミナーで来場者の「どうやって建築家を選んでいいかわからない」という質問に、こう答えていました。「あなたは今横にいる奥さんをどうやって選びましたか? 世界中の女性を比較してその中から選んだのですか?」。そんな人はまずいないはずですよね。大切なのは出会い。そしてそこで何を育て、何を作っていくかです。建築家選びのみならず、住まいの計画についても同様で、重要なのは話し合いをしながら、自分や家族にとって何が大切かに気づくことではないでしょうか。

住まいに「正解」なんてあるはずはなく、もちろん答えが世の中のどこかにただよっているものでもありません。そう、答えはすべて自分の中にあるのです。面倒でしょうが、住まいづくりを楽しみたい方は、こんな風にやってみてはいかがでしょうか?
住まいの話題[237]執筆者
■大庭 明典(おおば あきのり)/ 大庭建築設計事務所

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