■住まいの話題[238]:フロストガラスの扱いに秘めた想い
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空間の雰囲気

仕事を依頼してくださる方から「作品の空間について柔らかい感じが好ましい」、と雰囲気についてのご指摘を頂く。雰囲気とはにじみ出るものであり、作り上げるものではないが、人を包む光のコントロールは注意深く検討しているつもりである。そして、ある条件において追求した方法論が柔らかい空間に繋がる手法であったのだろう。
自閉的な住宅の内部空間(フロストガラスをどう扱うか)
都市住宅やプライバシーへの要求により、透明でなく擦りガラスを主に使用する事が条件の時もある。擦りガラスを通して入る光は屈折により内部に拡がる。外部からの視線に守られ、やわらかい光に包まれる癒しのような感覚が生まれる。しかし一方で、透明ガラスに比べると、圧倒的に重く、軽い閉塞感・自閉感が漂よう。私にはその存在が壁に近いように感じる。これをどうしたらよいか。
境界の曖昧な一続きの面で包む
まず、透明の窓を(外部からの視線が気にならないように)いくつか設けさせて頂き、少量の開口部でも閉塞感が生じないように、擦りガラスと壁の存在感を和らげる方法を検討したら良いのでと考えた。白い壁面も反射すればかなり光の量を発する。壁の存在感を擦りガラス側に近づけられないか。そう思考を進めるうちに、人を包む全ての面が緩やかに繋がり、例えば、壁、床、天井、開口部、そこから入る光りに照らされる部分、それらの境界が曖昧に感じられるようになればと思うようになった。これは光と影のコントラストを美しく見せるような建築手法とは異なり、フロストガラスを多用する時に、私が目指す柔らかい雰囲気の追求である。ここでは、1年半前に手がけた住宅を紹介します。
港北の家の西側外観:二重ガラスの
ガラス間のブラインドが見える
港北の家の2階LD:左側がフロストガラス
に四角い透明部分を剥がしたもの
港北の家
住宅の密集する変形敷地に建つ。建物の構成は2階+最上部にロフト階。長方形平面の1階の一部が三角に突き出し、2階のテラスとなる。構造は木造であるが、駐車スペースの上部にあたる2階が片持ちになるため構造計算を依頼した。屋根の梁は鉄骨で格子状に組み、2階の柱は全て通し柱として金物で地中梁(基礎)に緊結している。1階は個室を集めて細かい部屋割りとし、構造壁を十分に設ける。LDのある2階は、外壁以外に天井まで伸びる柱はなく開放的である。キッチンと洗面・便所・浴室を直方体としてひとまとめにしているが、このボリュームから柱を出さずに天井と縁を切る視覚的効果は大きい。

建物は南北に長い配置で、採光は(隣地庭から連なる)庭と道路に面する東西両側からとりやすい。逆に、南側は隣家が3階建てで屋上利用もされているため、建物を敷地一杯まで配置し、開口部は考えない。

採光用のガラスは壁の扱いで、柱を挟んで外装用と内装用の二重ガラスとし、当初はフロストフィルムを全面に施していた。西側は西日対策としてガラスの間にブラインドや、内部側にルーバー状の棚を設けている。サッシュは通風が効果的なようにその配置を考えたが、形自体はトップライトの正方形に部分的にあわせた。ここで問題が生じた。透明な窓からの光が強すぎるのだ。そこで今度は、壁ガラスのフロストを正方形の窓状に剥がし、光の照らす場所が全体にちらばる様に考えた。

この住宅で前述の狙いはまだ達成しきれていないと感じているが、効果はあったと思う。この方向が建築として求められるべきものかどうかの重要性は今ひとつ分からないが、ニーズもあり、もう少し追求していけそうである。余談であるが、LDの床は感覚的に白を選択することができず、フローリングとしている。

最終的に、この「雰囲気」が人工的な自然感にまで到達してくれたらいいと願っている。
住まいの話題[238]執筆者
■馬立 歳久(まだち としひさ)/ マダチ建築アトリエ

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