■住まいの話題[241]:働きながら住む
画像をクリックすると大きなサイズで見ることができます。
背景
近年のコンピューターの発達、通信の発達が社会的に大きな影響を与えてきていると思います。実感として私たちの生活は非常に影響を受け、インターネットやコンピューターに依存した生活を送っています。今まで田舎であったところが、これから先そうとは限らないし、あるいは都心であったところが、これから先の重要な位置にあるとは限らないかもしれません。

実際、海外でも地方の仕事でも必要最小限を除いて、リモートで設計や打ち合わせが出来ます。まだコンピューターが普及して10年しか経っていないのに、ここまで来ました。携帯電話を持ち始めて7年しか経っていません。もはや携帯はPCそのものになりつつある中、そのスピードの加速でいくと、これから先何処に住んでいてもいいのではないかと思えてきます。東京にいなくてもいいのではないか。むしろ東京に住んでいることが、いいってことにならないかもしれません。

地価の高い東京にわざわざ巨大な本社ビルを造るメリットは、これから先あるのだろうかと考えてしまいます。今、IT企業の各社がそろいもそろって六本木ヒルズにオフィスを構えていますが、不思議な気がします。彼らこそ通信の発達の加速化がもたらすものに敏感なはずなのに、ステイタスでしょうか。
SOHOの必然性
こうした状況下にあっては、自宅で仕事をする人も増えてくると思います。これまでにも自宅で仕事をしてきた人はたくさんいたと思いますが、例えば、自営業とかアーティスト系とか物書きとか限られた人たちです。しかし、いわゆる都心のオフィスに通勤しているサラリーマンの大部分の仕事が、安定した高速通信系でこなすことができるようになると、このような違ったジャンルの仕事でも、自宅で仕事ができるようになってくるのです。
A_residence+studioの外観 スタジオの内部
IT企業や大手企業などは、これまで介護や育児で退職していた優秀な社員の確保とオフィス費用や交通費の削減にメリットがあるとして、在宅勤務者制度に取り組みはじめているようです。そうなった時に、今まで住宅になかった活動が家庭の中に否応なしに入り込んでくるわけです。奥さんや子供が普通に生活している中で、お父さんが企画書を作成している、という構図ができると、住空間はどのように変化していくのか。また、都心の様子や需要面積の減ったオフィスビルはどうなっていくのか。そのあり方が今後の課題ではないでしょうか。
スタジオ
働きながら住むことに関する一例として、自邸を取り上げてみたいと思います。写真に示した「A_residence+studio」は上下に2つの住宅が重なった小さな集合住宅です。2つは異なった生活の仕方をしています。上部の親世帯は従来型(都市住宅)というか職住分離に対し、下部の子世帯は職住一体です。それぞれの住戸にはそれぞれ別の表現が与えられていて、上部はステンレス葺きの鉄骨造で中庭を持つ形式であるのに対し、下部はほぼ完全に閉じた鉄筋コンクリート造の黒い箱で、その内部が抽象的な白く大きな空間となっています。

この白い大きな空間を「スタジオ」と呼んでいます。スタジオは私たちの設計活動のベースでもあり、計画時点から自分のいいように最適化されています。ここでは寝室以外、キッチン・コンピューター・車が等価にあり、いわゆる家具となんら変わりないものとして存在しています。住まい続けるに従って、1つの空間の中に、食卓、仕事場、娯楽などの機能領域が微妙なグラデーションを描いて生まれています。
これから
現在求められているSOHOの定義は、まだ形式化されていないと思います。今後さらに加速するであろう通信技術によってもたらされる住環境の変化に対応した新鮮な提案をしていくことが、目下の私の課題となっています。
住まいの話題[241]執筆者
■内村 綾乃(うちむら あやの)/ A studio

旭硝子株式会社
お役立ちリンク  資料請求  お問い合わせ  サイトマップ  ご利用環境  サイトポリシー  品質への取り組み
(C) copyright 2001-2005 旭硝子株式会社 All right reserved.