| 画像をクリックすると大きなサイズで見ることができます。 |
| 平屋建てと3階建て。木造と鉄骨造。地方都市と首都圏。設計条件がこれだけ異なっていても、住宅であれば、暮らしやすい空間をつくるという点では同じです。ここでは条件の違う二つの住宅を通して、設計上で考えたことをいくつか書いてみます。 |
| 敷地条件 |
| 一つは、岐阜県の木曽川を望む高台の敷地に建つ住宅(A邸)です。周辺環境もすばらしく、風光明媚な場所にあります。そのため、内と外の空間を一体化することを目標としています。もう一つは、東京近郊のベットタウンにある住宅(B邸)です。近くに公団のアパートがあり、マンション開発が進みつつある首都圏の平均的な都市環境です。この住宅の敷地は東側に公園があり、その方向に開口部を開放できるという利点があります。 |
| 開口部について |
| 2軒とも外部環境鑑賞用の開口として全面フィックス(固定)のガラス窓を採用し、またそこから景色を取り込んで空間を構成するという方法をとっています。フィックス以外の窓は、敷地の持つ特性によりそのキャラクターを変えています。A邸は外部と連続した開放的なものが多く、積極的に周辺の景色を取り込むような位置に配置されています。B邸は都市環境に対抗するため、開口部は近隣の住宅からの視線を防御しつつ、採光・通風可能な場所に配置しています。景色を取り込んでいる窓、周辺からプライバシーを守る窓。いずれにしてもその位置を決定するには苦慮しています。 |
| 設計のテーマ |
| 住宅の場合、内部空間で家族相互の気配を感じることが必要です。家族が何をしているのか、居るのか居ないのかが解らないようではさびしいですよね。一般的に、住宅の性能面では、断熱・遮音・防犯等が取り上げられますが、それらは基本として押えた上で、まずは家族同士が楽しく住むことができる「ウツワ」を提供しないといけません。そのためにお互いのプライバシーを守りつつ、相互の気配を感じる方法がないか? この点を二つの住宅では、設計上のテーマとしています。 |
|
|
|
| A邸の外観と内観 |
B邸の外観と内観 |
| コミュニケーションウインドウと吹抜け |
A邸の基本構成は1層とし、平面的なつながりを意識してプランがつくられています。個室を居間周辺に分散配置としているため、それに面した部分にガラス窓を設けています。この窓は何処からでも空が見えるように視線を通すという役割もあるのですが、個室外の家族にその気配を感じさせる役割も担っています。そういう意味で、内部にあるこの窓をコミニュケーションウインドウと呼んでいます。もちろん、個室のプライバシーを妨げない場所に設置しています。
B邸は公園側の大きな開口部に面して内部に吹抜けがあり、その空間を取り巻くように動線を設定しています。いろいろな角度や方向から家の中を眺めることは楽しいことです。吹抜けは上下階をつなぎ、相互に声を掛けられる空間であり、窓と同じく大事なコミュニケーション装置です。居間を通らないと子供室に行けないようにしていますので、親と子のコミュニケーションを強制的に発生させ、いわゆる「引きこもり」がないようにしています。
このように、コミニュケーションウインドウと吹抜けはともに家族間の気配を感じたり、コミュニケーションを活性化させるための手段として採用されています。 |
| 家をつくる楽しみ |
| 同じような空間構成であっても、また、窓一つとってみても、場所や外部環境等によりそこに設置することの意味合いは大きく変わってきます。おそらく住宅は一生に何度も建てられませんから、このような比較での設計プロセスの検討はなかなか持てないかと思います。が、気の合った建築家と出会い、ディスカッションをするなかで、そのプロセスが理解でき、さらにその考え方が共有できれば、自分が設計したとの同等もしくはそれ以上の充実感や満足感が味わえます。そして住まい始めると、その空間での生活がより一層楽しめるようになると思います。これがオーダーメードで家を作る楽しみのひとつではないでしょうか。 |
住まいの話題[245]執筆者
■村松 禄朗(むらまつ ろくろう)/ m+office |