■住まいの話題[251]:住宅にいるもの、いらないもの
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実際に住宅の設計を進めていくときには、まず施主側の要望を聞くわけですが、何畳の○○室がいくつ必要で、和室も必要、収納はできるだけ大きくという話になりがちで、面積はおさまらないし、ついでに予算もおさまらないというのはよくある話です。

そこで建築家としては、法規の網をかいくぐり、厳しい見積もり調整を重ね、実施に漕ぎつけることになるのですが、その結果中庸なものになってしまうというのは、建築家にとっても施主にとっても不幸なことです。この際思い切って、自分の住宅に「必要なもの」と「そうでないもの」を整理してみるというのも良いのではないでしょうか。例えば、
収納
これは少ないといわれることはあっても、十分だといわれることはめったにありません。庭に大きなガレージがあれば一発で解決ですが、それはまずないので別の方法を考えます。日々の暮らしの中で毎日使っていて必要なものは実はさほどなくて、ストックとしてだけに意味があるというものがほとんどです。それらのものを一括に収納する場所をつくれば、あとはスペースごとの家具や小さな収納で対応できそうです。だいたい収納が大きければそれだけものが増えてしまうことになるので、収納は必要最小限で、清々しく暮らしたいものです。一方で、物自体にこだわりや愛着を感じているという場合は、それらのものに囲まれて暮らす(収納しない)というのも手かもしれません。
和室
茶室が欲しいという場合は必要ですが、よく要望されるように客間としての和室はどうなのでしょうか? 年に数度のために用意するのは無駄なように思えますし、4.5畳〜6畳という広さが中途半端で、広くとれる場所に分節をつくることになった瞬間に、急に所帯じみたスケールになってしまいがちです。これまで慣れ親しんできた畳に座る習慣を残したいという場合は、いっそのことフロア全体を畳にするというのもおもしろいかもしれません。道場のように青畳が敷き込まれたリビングというのも想像してみたら意外と楽しそうです。
北側窓からのやわらかな光 ブラジル移民住宅。玄関がなく煉瓦敷きのフロア
通風・換気のためにはガラリや換気扉があれば用が足りるので、やっぱり期待されるのは採光です。もっと明るくといわれることもありますが、デザイン的な重要さだけでなく、熱環境や周辺環境を考えるとそう簡単に開けるわけにはいきません。ガラスやサッシ枠の性能を上げれば熱的には解決されるようにも思われますが、露出狂的な住宅をつくるのもおかしいですし、均質な空間をつくりたいという特殊な場合を除き、スペースに応じた明暗のある襞を含んだ空間の方が豊かであるともいえます。例えばアトリエには、一定でやわらかな光をもたらす北側の窓をというように、空間の質と性能を合わせて窓というのは決めたいものです。
ダイニング
規模が大きければ、朝日のあたる部屋で朝食を食べ、日曜の午後はサンルームでお茶を飲み、夏はテラスでバーベキュー、というような夢の暮らしが送れるのですが、現実はキッチン脇に設けられた食卓まわりがダイニングルームと呼ばれています。家事動線を考えるとそうなるのですが、狭いスペースに用途を固定することになります。大家族ならリビングと兼ねて広めのスペースに象徴的な大テーブルを置いてみたり、少人数だったら時間帯や季節・状況に応じて好きな場所で食事をしたりというように、ざっくりとしたおおらかな空間をつくるのはどうでしょうか。
そして・・・
個別の要素に対して漠然としたイメージを積み上げていくと、平均的で、だけどちょっとしっくりこない住宅になってしまいがちですが、こんな風にひとつひとつを精査していくと、今までとは違った住宅像が浮かび上がってくるのではないでしょうか? 設計者としては、多くの可能性の中からひとつの空間を取り出すときに、既存のパターンにおちいらずに夢のある選択をしたいものです。
住まいの話題[251]執筆者
■丸山 美紀(まるやま みき)/ マチデザイン

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