■住まいの話題[253]:家を建てる楽しみ方
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もし今、「住宅を建てよう(買おう)!」と思った時、最初にイメージされるものは何でしょうか。分厚い高級紙で広告を展開する分譲マンション、町のあちこちにのぼりが立つ建て売り住宅、展示場にて夢を売るハウスメーカーの注文住宅等々、そして少数派になってしまうのが残念なところですが、「建築家に設計を頼むこと」。

最近でこそ、いろいろな雑誌で建築家が取り上げられ、広くその存在が認知されてきました。でも実際、建築家に頼もうと考えられた方でもどうすれば良いのかよくわからないし、何となくイメージが先行していたりして・・・。僕は事務所を持ってからちょうど1年くらいになります。いろいろな方とお会いする機会が増えるにつれ、あらためて「建築家と家を建てること」ってどんなことなのか、考えてみました。
頼むのは誰?
世の中には、公共施設、民間施設、集合住宅、一般住宅等、様々な建物がありますが、施主(クライアント)によって建物に対する考え方が大きく違うので、その都度、頭を切り換えていかなければなりません。

例えば、最近ディベロッパーと計画した集合住宅の場合、敷地が2.3mの取付け道路しかない土地に、一体どれだけの建物の容積がとれるか検討することから始まります。ただ、敷地に最大限のボリュームを建てれば良いというものではなく、工事もできて事業計画もクリアーして、かつそこに住むであろう人々を想像しながら、皆が気持ちのいい生活ができるように頭をひねるわけです。この場合住む人は想像するしかありませんから、建築家が考える理想を展開していき、クライアントとコンセプトを練り上げていくわけです。実際の利用者を社会状勢を踏まえながら仮想するのですが、それは建築家とクライアントの理念や理想が大きく作用します。これはこれで互いに「グッ」とくる楽しい仕事です。
林の中の家:敷地に縄張りした写真 林の中の家:初期のプレゼンテーション模型
さて、住宅の場合はどうでしょう。最初から家を使う人がやってくるわけですから、対象がはっきりしています。当然僕たちはその人「だけ」のために「イッチョウやってみよう!」ということになります。大抵の方は家に対する漠然としたイメージがあって、欲しい機能はいくつも思い浮かぶ。だけど心のどこかに「もやもやとした気持ち」があると思います。その原因を整理しないと、なかなか「家の形」が見えてきません。建築家の理念や理想だけで解決できる問題ではないのです。
カウンセリング開始
多分、機能的な要求はすぐに思い浮かぶと思います。機能と機能を繋ぐものが何なのか、それが「もやもやとした気持ち」の原因だったりすると、機能は満足できるけど何か足りないなぁ、という感じになります。その断片を繋げてくれる接着材のような物を僕たちが提案していって、クライアントの真意を拾い集めて整理しながら、コンセプトを互いに共有できるように、一緒に考えていきます。

ココが正念場です。エネルギーもいりますが、もっとも楽しい所でもあります。この作業は家が完成するまで続きますが、完成した時、いや、もしかしたら住んでしばらくした時かもしれないけど、今までかかっていた「もやもや」がさぁーっと晴れればいいなあと思います。まるで「カウンセリング」のようでしょ。 でも、建築家も同時にカウンセリングを受けているのです。住む人と一緒になって考えることで新たな発見があったり、考えていたことが整理されたりするのですから。
楽しみ方
今、こんなことを考えながら、林の中に住宅を設計しています。クライアントとおいしいお酒を飲んだり、敷地に提案している建物の大きさに縄を張ったりしながら、家を建てるという共同作業を通して、どうすれば互いに過程を楽しめるかいつも考えています。楽しみ方は家の数だけあると思います。ただ「もやもやとした気持ち」が、いつしか形を持ち現実に立ち上がる楽しさだけは変わりません。プロセスを満喫する、それが建築家と家を建てる時の楽しみ方かもしれません。

「もやもやとした気持ち」が、敷地に初めて立って感じた、さわさわとした空気のようにやさしく吹き抜けてくれるといいな、と思いながら・・・。
住まいの話題[253]執筆者
■森田 修司(もりた しゅうじ)/ リトルライン一級建築士事務所

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