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| ものづくりを通じて |
私たちの仕事場では建築設計だけでなく、神奈川県近郊のいくつかの工場とともに家具やプロダクトのデザインを行っています。一般には異業種と考えられている分野に取り組む様になってから、私たち自身、生活を豊かにするための様々な視点に気づかされています。また、設計をするということはそのジャンルが何であれ、その使い方と作り方をデザインする事だと実感しています。
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| 魚のための建築物 |
private aquarium(プライベート アクアリウム)という熱帯魚の水槽は、私たちがデザインし最初に市販されたプロダクトです。ワイドテレビの様なこのアクアリウムでは、水辺で暮らす魚達の様子を、ぽっかりあいたシリンダーを通して間近に眺める事ができます。また、ベットサイドでぼんやり魚を見つめることもできる様に、照明を内蔵しています。
この水槽の容量はたったの6リットル。初心者でも扱い易い水の量のまま、設置面積をコンパクトにした結果、薄っぺらくて前面面積の大きなものになりました。通常の6リットル水槽は、立方体での換算では概ね15cm×15cm×15cmになりますが、このアクアリウムは約30cm×30cm×10cmで高さは倍以上になっています。これに比例して水圧も大きくなりますから、この水槽のシリンダーは補強としての役割も持っています。
つまりこの製品は、暗闇に浮かび上がる幻想的でプライベートな水族館であり、魚達が生活をするための建築物でもあるのです。 |
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| private aquarium |
composite vase |
| 封じ込められた水滴 |
ものづくりの世界では、まるで生態系の様に大小様々な工場が連鎖しながら一つの製品をつくっています。アクアリウムの発表を通じ、その製造元の工場を起点として、徐々に私たちと様々な製造業の方々との横のつながりが出来てきました。その中での出会いが、理化学ガラスの製作を行う工場でした。
composite vase(コンポジット ベース)というフラワーベースでは、この工場に在籍する老練の職人によって宙吹きされたガラス容器を、アクリル樹脂に封入しています。つまり、手作りのガラス容器をアクリルを成形するときの「型」として用いることで、アクリルの内部が水滴形の空洞になっている製品を製作するというアイデアです。
この世に同じ形状の水滴が一つもない様に、このフラワーベースには同じ形状のものがありません。また、手仕事の痕跡であるガラス容器の表面のかすかなゆらぎが水泡と重なり合い、草花がより生き生きとしたものに感じられます。 |
| デザインすること |
建築、家具、プロダクト等、私たちのこれまでの活動を振り返ると、その活動範囲に脈絡が無い様に思われますが、私たち自身は共通点が多いと実感しています。それはいわば「容器の設計」と言えるのかもしれません。この場合の容器とは、生活の中での様々な出来事やその仕事に関わった職人の技術や思いを受容するものです。大小様々な容器をデザインすることを通じ、ある容器が他の容器の中に包含されるという具合に、それぞれの分野の仕事が重なりあいながら、一つの生活観が透かし見えてくることが私たちの理想です。
日常とは堅固に存在している様に思われがちですが、人の生活を考えるとき、家づくりを考えるとき、日常の仔細な行為や環境の変化を注意深く見つめ直すことによって、もう一つの日常の世界が広がってくるはずです。社会状況の変化のスピードが速まるなか、私たちが暮らす世界はその内容を複雑化させています。この中で、使い方、作り方をなにかシンプルな視点から整理しなおす様な、しかしながら包容力を失わない容器の設計を行うことが、私たちのプロフェッションでありデザインの力だと信じています。 |
住まいの話題[263]執筆者
■原田 一朗(はらだ いちろう)/ ハラダデザイン |