■住まいの話題[273]:住宅のプロトタイピング
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プロトタイプとは
プロトタイプという言葉を耳にされたことはあるでしょうか。自動車に関する記事をみていると、モーターショーのレポートなどでよく見かけることがあります。いわゆるショーモデル、デザイナーたちの想いが最も純粋に込められているものに、冠されていることが多いようです。余談ですが、「プロトティーポ」はそのイタリア語です。

この「プロトタイプ」を辞書で調べてみると、「実験的に少数だけ作るモデル」などと紹介されていたりして、「試しにつくってみたもの:試作品」というニュアンスが強いようです。ただ、このプロトタイプにはいくつかの側面があって、「試作品」のほかに「原型」、「手本」、「典型」、「見本」、「代表例」などの意味もあります。つまり、「試作品」でありながら、大量生産品の「原型」であり、「典型」という役割を担っているのです。
住宅におけるプロトタイプとは
プロトタイピングとは、そのプロトタイプをつくる行為そのものを意味します。では、住宅の設計におけるプロトタイピングとはどのようなものでしょうか。

通常、住宅の設計は個別の敷地、クライアントの希望や事情などをもとに与件が整理されるので、すべてが特殊解であると考えられます。しかし、戦後の住宅史をひもといてみても、「プロトタイプ」と呼べそうな住宅がいくつもあることに気づかされます。

戦後間もない時期では、建築家の池辺陽による「立体最小限住居」や、増沢洵による「最小限住宅」(近年「9坪ハウス」として再評価、再解釈の機運が高まってきました)が挙げられます。さらには、公団住宅の2DK形式のもととなった「51C型」も、まさしくプロトタイプとしてその息は長く、現在でもその呪縛が功罪含めて専門家の間で話題になるほどです。1970年代には、安藤忠雄による「住吉の長屋」など、(狭小)都市住宅のプロトタイプとも言うべき作品が数多く見られます。最近では、「MUJI+INFILL」として商品化もされたように、難波和彦による「箱の家」が典型的なプロトタイプといえるでしょうか。
デッキハウスのプロトタイプ
(妙蓮寺の家)
都市の風景をトリミング(マスキング)する試み
(小金井の家)
これらの住宅をプロトタイプならしめているのは、「テーマが明解なこと」、「時代の空気を感じさせること」、「その後類似した物件が散見されること(真似されやすい)」などが、挙げられると思います。
プロトタイピングとは
プロトタイピングとは、ある意味標準化への指向でもあり、様々な問題や与件を最小限の方策で解決することができないか、という取り組みともなっています。その試行のなかから、他の事例への応用を前提とした方策を抽出する作業が繰り返されていくのです。

マスプロダクションの現場では、そこから大量生産品を作り出していく上で犠牲になっていくものも多いことでしょう。プロトタイピングの段階では顕著だった固有の想いが、標準化の過程で切り落とされることは珍しいことではありません。

私は建築家として設計を続けていく中で、クライアントの夢や想いが詰め込まれ(スケジュールや予算の都合でなかなかうまくいくことはありませんが)、さらに標準化への可能性をもっている、というプロトタイピングに携わり続けたいという想いから、住宅を設計しているのかもしれません。

これからご自分のお住まいを考えていかれる皆さんも、ご自身のライフスタイルにあわせた「プロトタイプ」に想いをはせてみてはいかがでしょうか。
住まいの話題[273]執筆者
■濱中 直樹(はまなか なおき)/ ハマナカデザインスタジオ一級建築士事務所

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