| 画像をクリックすると大きなサイズで見ることができます。 |
| 建築家は「家相」とどう向き合うか? |
仲間達とワイワイやっていた時、「家相」のことに話題が移りました。友人建築家の一人は「できれば家相住宅の設計は避けたいなあ・・・」ポツリとこうつぶやき、別の一人もコックリと肯きました。二人共、家相住宅の設計を経験していました。
「家相」と聞くと、大方の建築家は弱腰になってしまいます。判断基準の不可解さを思い描くからでしょう。また、家相は観る“先生”によって判断が異なるため、書物による予備学習が何の役にも立たないということもあります。加えて、先生とのやりとりには礼節が求められ、先生を相手にしての丁々発止は御法度だったりもします。そんな訳で、建築家は先ず一様にため息をつくことになります。
計画条件が不可解である状態は、住宅設計にとって致命的かもしれません。施主が望む条件は、それがたとえ矛盾だらけでも「筋や道理」がある限り、建築家の射程距離を越えることはありません。そして「矛盾する条件をどう料理するか?」が、案外一番の腕の見せ所だったりする訳です。ところが、有無を言わさず降臨してくる家相条件を前にしては、「参ったなあ〜」と溜め息をつくことが精一杯です。
しかし、「家相を取り入れたい」という施主の切なる希望に応えない訳にはいきません。建築基準法の中にも不可解で時代錯誤の条項が多々ありますし、度を越した主張をお持ちの方が計画地の隣に居たりもします。家相条件も実は、家づくりを取り巻くこれら種々の不可解な条件の一つに過ぎない、と思えば気が楽になってきます。また、家相条件がアイディアを生み出すかもしれません。そう考えると、「家相条件をむしろ積極的に利用してみよう」なんて勇気も湧いてきます。元来、根が生真面目な建築家の大方は、このように考え合点し気を取り直すものです。
皆さんの関心事は「家相とデザインは仲良く同居できるの?」ということでしょうか。ここで言う「デザイン」とは カッコイイ素敵なデザインのことですが、使い易さ、居心地の良さ、そして驚きのあるつくり、なども含みます。優れた「家相」を備え、素晴らしいデザインの家ができれば言うことなし。それが皆さん(そして我々)の本音かもしれません。 |
|
|
|
家相検討1:「階段を上階と下階でずらす」 のご教示あり(これには不対応) |
家相検討2:階段の位置が下にズレた (プラン変更を経て最終案に至る) |
| 「家相」住宅の設計でこんなことがありました |
ある時、“先生”の添削した図面が手元に戻ってきました。よく見ると、それはコラージュ図面でした。何と先生は私の図面を部屋ごとにハサミで切り取り、並べ替えたのです。ある部屋は面積が縮小され、別の部屋は間延びしています。シンクを反転しなさいとの意味で、キッチン廻りには反転コピーまで貼られていました。積み上げてきたアイディアが音をたてて崩れ、私の存在も見事に吹き飛んだ瞬間でした。これ程の「ご教示」があれば、もう私の仕事ではないなあ・・・などと言いながらも気を取り直し、先生のジグソーパズルと格闘しながら試行錯誤を重ねました。
一般的に、先生のご教示は間取り図(平面図)に下され、断面計画や立面計画は守備範囲外です。そこで「決め手」は平面図に断面計画を重ねる作業でした。断面計画、つまり縦方向のアレコレを画策する作業ですが、思いがけず豊かな空間がたちあがりました。そして外観デザインにもテーマが生まれました。全体像が鮮やかに焦点を結び、「よし、これならいけるぞ!」と。結果は、図らずも先生とのコラボレーションの賜になりました。 |
| あなたに必要なこと |
| もしあなたが住宅に「家相」を取り入れたいのなら、建築家と一緒にトコトンこだわってみてください。建築家はその習性として粘り強く、度重なる試行錯誤に耐え忍ぶものです。建築家にとっては予期せぬ遠回りになるかもしれませんが、恐らくあなたの望むデザインに辿り着くことでしょう。あなたに必要なことは、遠回りを辛抱する寛容さ、そして建築家に十分な時間を与えることです。そうすれば、「家相」と「デザイン」は間違いなく両立することでしょう。 |
住まいの話題[275]執筆者
■鈴木 基紀(すずき もとき)/ 鈴木基紀+(有)空間設計社 |