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| 規格化と大量生産 |
私は現在、東京都内に住んでいますが、郊外の住宅地街にゆくといつも実感することは、どこに行っても大体が同じような街の構成で、大きな街道沿いには見たことのある大きなチェーン店が建ち並んでいるということです。最近のこうしたお店は、明るくキレイで駐車場も完備しており、地域の人たちにとっては便利なことに違いありません。
規格化された町並みに規格化されたショッピングモール、規格化された店舗に規格化された商品。どこに行っても大量生産された同じモノが並ぶこの状況に、私は何か無機質で空々しい感じがして、歩いていて息苦しい気分にさえなります。ここで人々が出来ることは、唯一「商品を選ぶ」という行為のみです。それでは、住宅も同じように選ぶだけで良いのでしょうか? |
| 建築家に依頼するということ |
住宅の設計を建築家に依頼するということは、御施主さんにとっても相当の覚悟が必要です。設計において一番重要なことは、「新しく建てる住宅においてどんな生活を送りたいか?」という御施主さん家族のイメージであり、御施主さんの側でそのイメージを想像することが出発点となります。その想像する力をサポートするのが建築家の大切な役割です。
私達建築家の仕事は、毎回ゼロから御施主さんと一緒になって「つくる」という行為の繰り返しです。私の事務所の場合、住宅一軒分の図面の量はおよそ60枚から70枚程度ですが、実際にはこの倍以上の図面を作成します。同時に検討用の模型をいくつも作りながら、様々な角度から検討します。出来上がってしまってから「失敗した!」というわけにはいきませんから、図面に描く一本一本の線の持つ意味は重要です。 |
| 「想像」のプロセス |
| 御施主さんの家族構成やライフスタイルはまさに千差万別です。初めはみなさん、漠然としたイメージを私に説明するので精一杯ですが、初期の段階はそれで充分です。 |
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| シンプルな吹抜け空間のあるリビング |
天井まで届く壁の内側を利用した本棚 |
| 御施主さんの説明してくれるコトバのスキマから、私の想像力をフル回転させ、どういったものが欲しいのかを、与えられた敷地や予算に照らし合わせながら一つずつ積み上げてゆきます。お互いの想像力をキャッチボールすることによって、徐々に住まいのカタチが見えてきます。多くの人にとって、このようなやりとりは初めてのことですから大変ですが、このプロセスが実は一番重要であり、大いに楽しむべきところでもあります。 |
| 素材とは |
設計初期の段階で、建物の構造とプランが固まりますが、次の段階は素材選びです。ショッピングモールで量産化されたモノが頻繁に使われる寿命は、長くても5年程度でしょう。しかし、住宅は多くの場合、その後何十年も住み継がれることになるのです。そのために、どのような素材をどのように組み合わせてゆけばよいのか、住宅で使用する様々な素材に対しての理解と使い方が、建築家に問われることになります。
住宅が完成して新生活が始まると、徐々に色々なモノが増えてきますから、飽きのこない家にするためには、ちょっと控えめにシンプルにしておくことが望ましいと思います。全体の構成と細部の取り合い、このバランスを最適にするために、建築家は常にホンモノの素材(木・鉄・ガラス・アルミ etc,)に触れ、素材の持つ「力」を引き出さなければなりません。 |
| 決して「手」だけじゃない |
私にとっての「手づくり」とは、“アタマと身体を使って全力でモノづくりに挑戦すること”です。決して「手先」だけではなく、出来合いのモノをはめ込むだけでもありません。そのために、常に新しい技術や素材、社会の変化などに目を光らせ、足を使って見聞きすることを怠らないようにしています。そしてそれ以上に、人と人とのコミュニケーションを大切にしています。前述したように、御施主さんとのキャッチボールが充分でないと、双方が満足したモノづくりには決してならないからです。
快適な住まいは、人と人との信頼しあえる良い関係無しには、作り上げることが出来ないのです。 |
住まいの話題[279]執筆者
■川田 高史(かわだ たかし)/ A.K.A.建築・都市研究所 |