■住まいの話題[282]:「樹海都市」(ハウスフォレストリー)について
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私が今、家の設計をする時に最も重要なものの一つと考えている「環境と住宅(建築)との両立」の考え方を述べてみます。
ハウスフォレストリーとは
ハウスフォレストリー(HOUSE-FORESTRY)とは、住宅(HOUSE)と森林(FORESTRY)という意味を合体させた造語です。

ハウスフォレストリーは、住宅(建築)と樹木、都市と森林、人工と自然という対立するものであると思われてきたものが、同じ場所に同時に成立するという考え方です。従来までは、森は森専用エリアに、都市は都市専用エリアというようにそれぞれ別の場所にゾーニングされ、相いれないものとしてあったわけです。これら2つのものを同じ場所に同時に、しかも相互に役に立つものとしてつくりだそうということです。

例えば、樹木(特に落葉高木)は、夏には日陰を、冬には落葉して日なたを提供してくれますし、花や実は、人間やその他の昆虫や鳥などの生物をも育みます。また適度な湿気の放出により、気温上昇を抑えたり、C02を吸収・固定化することで地球温暖化防止にもなります。そしてなにより、私達人間を癒してくれるなどの多大な効果があります。

このような樹木の効果は高度な建築性能ともいえるわけです。例えば、高さ13〜14m級の落葉高木を立ち並べて、その日陰になるところに住宅や建築を配置すれば、それだけでも多大なる省エネ効果が期待できます。冬は暖房費の節約になりますし、夏にはエアコンも不要になるかもしれません。木漏れ日は誰をも心地良くするでしょう。樹木にとっても、人間に手入れされることで病害虫などから守られるなどのメリットがあるわけです。
アグロフォレストリーとハウスフォレストリー ハウスフォレストリー幸手:外観
このような、樹木と住宅(建築)の等価で有益な関係が、ハウスフォレストリーのイメージです。ただ、ハウスフォレストリーの当面の問題点としては、膨大な量の落ち葉掃きや樹木の管理はどうするのかといったことが考えられます。

落ち葉掃きについては、もともと落ち葉は貴重な農業資源だったことを考えると、地域エリア内で有機肥料化して、家庭菜園やクラインガルテン(市民農園)に利用することが有効でしょう。樹木の管理については、前記のような多大な効果をふまえると、多少の管理費アップは充分に説明可能であると考えられます。

以上のように、ハウスフォレストリー(樹海都市)は、環境の世紀といわれる21世紀型の画期的な家づくり・まちづくりの考え方といえるでしょう。
アグロフォレストリーとは
ここで参考までに、アグロフォレストリー(AGRO-FORESTRY)についても述べてみます。アグロフォレストリーは、農耕学(アグロノミー)と林業(フォレストリー)を合体させた言葉で、農作物栽培と樹木栽培を同時に同じ場所で行うことです。

例えば、熱帯地域でカカオやコーヒー等の栽培をするときは、シェードツリーと呼ばれる大樹の下で行います。カカオやコーヒーは多少の日陰を好むため、その木のおかげでよく育つわけです。そして、シェードツリーも木材として同時に利用しようという考え方です。

このようなカカオの畑は一見、うっそうとした森林とほとんど同じような姿をしています。従来までは、森林を焼いて農地をつくる焼き畑に代表されるように、農地と森林は同時に成り立たなかったわけですが、アグロフォレストリーは農地と森林を同時に同じ場所で成り立たせる考え方というわけです。

要するに、アグロフォレストリーのカカオやコーヒーの木の代わりとして、シェードツリーの下に住宅や建築をつくると、ハウスフォレストリーになるというのがわかりやすいイメージです。
住まいの話題[282]執筆者
■井口 浩(いぐち ひろし)/ (株)井口浩フィフス・ワールド・アーキテクト

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