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| 家を作る |
家を建てようという時、その何ヶ月、もしかすると何年にも渡るプロセスの間、未来の住人であるあなたの頭の中心にあるものは何でしょうか。
さまざまな災害に対する安全性、健康を守ってくれるという保証、快適な環境の確保? もっと極めて現代的な問題、たとえば投資としての効率や地球環境への負担軽減という視点で沢山の問題への答えを見出していく人も居ることと思います。
人生でそう何度もあることではなく、勝手もわからないのに失敗は許されないという雰囲気があります。投資額は大きく、ほとんどの人にとってローンの返済期間は長すぎるくらいに長い。決断を迫られたとき、安全策と思われる方へと気持ちはなびきます。
ただ、多くのものがそうであるように家作りでも、客観的に正解を積み重ねていったつもりでも何故か、出来上がった全体は必ずしもしっくりくるものになるわけではありません。むしろ長い制作期間を通して家を作り上げる牽引力となりうるのは、客観性とは無縁の個人の「思い」であるように感じています。 |
| 公園を作る |
たとえば、もし作るものが家ではなく、近所の小さな公園だとしたらどうでしょうか。公園もいまや無邪気な遊び場とは言えなくなりましたが、子供があそぶ場所、楽しむ場所という単純明快な目的は昔のままです。
いくつかの遊具を選び、安全基準をチェックし、コストと照らし合わせながら慎重に敷地に配置していく。入り口は道路に直接面さないように、「動く遊具」はメインテナンスコストがかさむからはずそう、こっちの小川は子供が落ちないように柵を作って、親の視点から見て死角ができないように・・・。
子供の安全という責任を考えると、家とおなじように慎重にならざるを得ません。ただ、きっと大きく違うのは一つ一つの判断の後の検証として、あなたはその公園で遊ぶ子供の姿を思い浮かべ、「果たして楽しいだろうか」と考えると思うのです。 |
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特別大きく緩やかな階段を、 家の中で一番いいところに据えれば 自然とそこが生活の中心にもなります。 |
収納量よりカウンター面の明るさ、 照明の美しさを優先したキッチン。 日中はトップライトから自然光が入る。 |
| 安全と機能が見落とすもの |
そういう目で再度、これまで下した判断を見直してみると、時に(というか往々にして)「安全」や「機能的」は「楽しい」と背反事項であるというジレンマにおちてしまうわけです。子供の視点からすれば、親の目から隠れるのがうれしかったり、川に入るのが楽しかったり、それはスリルという直接的に「安定していない状況」を楽しむ気持ちによるところもありますし、理由付けなどなくとも子供ってそんなものですよね。
小川には入れたほうが断然楽しい、川に入ったら転ぶ子供も出るだろう、その時にどうすれば怪我をしにくいだろうか、ジレンマを解決するための工夫が始まります。 |
| 家作りの中心になるもの |
住宅も同じで、性能と言う視点とともに、時にはそれと相反してでも「楽しさ」や「豊かさ」といった施主の個人的な思いを中心に持ってこないと成り立たない面があります。しかし、残念なことに、設計段階でそうした思いについて施主と話す時間はどんどんと減ってきていて、メディアがあおることもあり、性能に関する話し合いに終始するような打合せが増えているような気がするのです。
そんなに難しいことではありません。信頼できる設計者を見つけたら性能については任せてしまい、公園を作るようなつもりで、まず自分にとっての「楽しさ」「豊かさ」が何であるかを家作りを通して見つめ直してみてはいかがでしょう。家作りが単なる買い物で終わってしまってはこれほどつまらないことはないと思うのです。 |
住まいの話題[343]執筆者
■橋本 健(はしもと たけし)/ 橋本建築スタジオ |