■住まいの話題[354]:市井の設計者と建築家、その違いの真髄は?
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結論から言いますと、設計者の誰もが建築家を名乗る日本の実相では違いはない状態といえます。しかし、寄って立つ場で本来あるべき姿は違ってくるはずです。個人差のある倫理や技量を持ち出すのでなく、あくまで立場の視点からその姿を考えてみます。
建築士?建築師?建築家?建築屋?設計者?
小説家、文士、国語教師、聞屋(ぶんや)と、文を扱う職業でもこのように違う表現があります。通常、“師”は依頼者の心身に何らかの影響を与える職業で尊敬の念が込められて使われ、“士”は依頼者のために何らかの役割を果たす代理として屹立することで依頼者を守る技術的(最終的結果に主張主観の入らない)職業に使用され、“家”は味の違いを売りとして快や感動を与える芸術的(最終的結果に主張主観の入る)職業に使用されています。その観点からして、建築家とは設計する建物によって他の設計とは違う味の快適性を施工者が異なっても作り出せ得ると、自他共に認める設計者を指すことになるかと思います。
設計者(屋)の職能
建築師や建築屋は論外として、設計者(士)も果たす仕事内容は属する立場によってかなり違ってきます。メーカー等のように施工ルールが決まっている組織では、そのルールから外れたことは出来ないため、設計図書は極めて簡便なもので済みます。その辺の各違いについてはここでは省略します。しかし、どんな立場であれ設計者としての役割は本来依頼者の要望を整理し、与えられた条件内で実現できるように内容を施工組織に即してまとめ上げ、施工者に理解できるように伝え、施工上の不明や問題部分を検討指導することにあります。
吸音吸気等性能確保手段の
建築デザイン化提案
開口部方立の軸力負担等構造化
空間の提案(集成材壁式工法)
設計者の第三者性

設計者が施工者と分離して、第三者の立場にあることを強調する論調があります。そのこと自体は職能維持には大事なことですが、もし単に第三者的立場の価値のみを強調することでしか、独立してある設計者の立脚点を説明できないのであれば、制度上か倫理上の話になってしまい、仕事内容や能力上は関係ないことになってしまいます。

プロに依頼する仕事とは
依頼する人もされる人もあまり自覚していないのですが、およそプロと言われる人に依頼するのは、要望の中に本人では越せない障害や解決できない矛盾を本質的に内包しているためと云えます。そしてその克服する障害や矛盾の大きさが、プロの仕事の技量を表すといえます。それらの障害や矛盾の内包を読み取れないあるいは克服することなく終える仕事は仕事ではなく代理作業でしかありません。設計者に依頼するのはまさにその矛盾の克服を期待してのことです。

メーカーや設計施工の設計は、あくまで施工の補佐の立場であることから矛盾の克服は施工に求められ、そこでの設計は既知の発想や手法の範囲内で無理なく施工できるように要望をまとめ伝えることです。しかし、施工から独立している設計の専門家となれば、設計段階で要望の中に含まれている障害を越え、矛盾を克服して実現可能と思わせるなんらかの新しい発想や手法もしくは価値を含んだ提案が暗に求められていると云えます。それに応えることが、設計を施工から独立してあろうとする者の必須条件であり、職能の本質であろうかと思います。
建築家選びは見識が問われる
依頼者が何となく自分の要望に含まれた矛盾の克服を期待していても、受ける側にはその自覚に欠ける者。建築行為ではなく結果として形の差異のみを追求するあまり、本来の職能をないがしろにしがちな者。矛盾を克服するのに施工者の犠牲や技量の上でしか実現できない者。家協会に加入しているからというだけで建築家と称している者。もちろん職能を全うしすばらしい仕事をしている者。このように、色々な建築家が数多くいます。それが最初に述べたように社会の実相です。建築家選びに、選ぶ人の見識が問われてしまうと言われる所以です。
住まいの話題[354]執筆者
■藤原 昭夫(ふじわら あきお)/ 株式会社 結設計

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