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| 少子高齢化・・・建築家としての活動 |
設計の傍ら、ここ数年親子を対象とした活動に携わっています。日本の出生数は、1973年の第2次ベビーブームを境に減少し、翌々年には出生率2.0を下回りました。その後、減少の一途を辿っています。
60年代末に生まれた私は、言わば少子高齢化とともに生きてきました。近所の子ども達と空き地で遊びまわった幼少期の原風景は、今の子どもと共有するすべもないほど、外遊びの空間量は激減しています(仙田満東京工業大学名誉教授―学生当時の指導教官―の一連の研究より)。また同世代からは、安心して子どもを産めない切実な状況を耳にします。
行政による子育て支援への意見はさておき、建築家という立場でできることから始めようと、日本建築学会子ども教育事業委員会の末席に加わりました。
この委員会では、親子を対象としたワークショップ(「親と子の都市と建築講座」)を開催しており、多くの市民の方にご参加いただいています。また昨年、こども環境学会との共催でシンポジウム「子どもの成育環境を考える―新しい視点―」が開催され、医療・保育・教育・行政・建築をはじめとした専門家と市民の方々から貴重なご意見をいただき、家庭・学校・地域について、幼児から中高生への広範囲な問題点をうかがい知る機会となりました。 |
| コミュニケーション空間・・・設計での試み |
これらの活動は、設計者としての私にも影響を与えてくれます。かつて子どもは、親のみならず、祖父母・親類、隣近所・商店をはじめとした地域の人々など、多くの目で見守られてきました。子育て世帯の孤立、地域社会の崩壊が叫ばれる今、対話を促す空間づくりを行うことが私の役目だと思います。
こうした視点は住まいづくりにおいても重要で、設計段階での工夫の余地はまだまだたくさんあります。住宅設計事例を2つ紹介しましょう。 |
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| VIEW CUBE |
中央アルプス山麓の家 |
一つは「VIEW CUBE」(写真左)です。この家には、玩具・絵本の棚を兼ねた窓辺のベンチや、絵や写真を貼り込むパネル(キッチンカウンター)を設えています。親子で一緒に遊ぶ手掛かりとしました。アルコーブ状の畳スペース、外部の2つのテラスは子ども達の遊び場であり、その様子をキッチンから垣間見られるような間取りとしています。これらは家族の対話を促す仕掛けです。通りに面した空中テラスは、隣近所との“井戸端”でもあります。
もう一つの「中央アルプス山麓の家」(写真右)は、森と雄大な眺めに対峙する住宅です。退職後の夫婦が生活し、子ども世帯が泊まりにくる山荘となります。対話を生み出す設えは、子どもに限るものではありません。中心にキッチン・ダイニングの大きなT字型のテーブルを据え、皆で一つのテーブルを囲って憩う住まいとします。明るく開放的で、落ち着きのある内装となる予定です。眺めの良いテラスは、第2のリビングです。テラスからは小径を行き交う人との会話を生み出すでしょう。建設中の現在も、近くの集落の方々が様子を見に遊びに来ており、既に交流が生まれています。
このように、子どもの目線で考えたことは、子どもが育つだけでなく大人も育つという、世代を超えた空間づくりに生かされると実感する日々です。住まいを、まずはコミュニケーション空間としてカタチづくるよう常に心掛けています。人と人との対話、家族と地域との交流、自然との呼応・…出来上がる住まいのカタチは敷地環境や住まい方に応じて異なります。
建築家と画家や作曲家との違いは、話し合いの中でカタチを起こしていくことです。“設計=対話のカタチづくり”を念頭に、お施主さんに一緒に楽しんでいただけるよう、設計に取り組んでいます。 |
住まいの話題[384]執筆者
■伊藤 泰彦(いとう やすひこ)/ 伊藤泰彦建築研究室 |