■住まいの話題[400]:2つの「いえ」の距離感
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近年、東京近郊で二世帯住宅の設計に携わる機会が複数回ありました。大半は子世帯の旦那さんが生まれ育った家を建て替えて、親世帯と一緒に住むための住宅を作るというものでした。東京では土地も高いですから、土地から入手してマイホームを建てるのは高嶺の花です。老朽化した実家を建て替えて親の土地の有効活用を図ろうという合理的な考えもあるでしょう。あるいは、親の老後の世話も考えて近くに住んであげたほうが安心だという思いや、子供たちの面倒を祖父母にみてもらえて安心という思いもあるでしょう。二世帯住宅づくり、それは2つの家族が一つの家に一緒に住むという簡単な話ではなく、たくさんの思いが交錯しながら進んでいくのでしょう。

敷地に最適な「かたち」の建物をつくる

このような住宅を設計する時に、いくつか気にかけていることがあります。1つは、その敷地に最適なかたちの建物をつくるということです。今まで1軒の住宅が建っていた時には若干のゆとりがあった敷地でも、2家族分の住宅を建てるとなるとさすがに十分な広さではありません。敷地にかかる様々な建築規制をクリアし、豊かな住環境を内包できる空間が確保できるように苦心します。各住戸のプランの希望なども考慮しながら進めると、超難解なパズルを解いていると錯覚してしまう時すらあります。でも、敷地にはそれぞれの個性があります。もちろん良い面も悪い面もありますが、それらを見極めて、長所を最大限活用し短所を克服できるように設計案づくりを進めると、その敷地にピッタリあう「かたち」が見出せるのです。それはとても大切なことです。

狛江の二世帯住宅:夕景外観 本郷のシェアードハウス:共用のリビング
家族メンバー間で優先順位を共有する

同時に設計過程で向かい合う課題は、家族の各メンバーのニーズにどう答えるかというテーマです。親世帯の夫婦、子世帯の夫婦、そして子供たち。5〜6人のメンバーがいれば、それぞれの希望があって、重なりあう部分もあれば相違もあります。限られた条件下で設計を進める訳ですから、それらの全てを満たすことは出来ません。「あれも、これも」という訳にはいかず、必ず「あれか、これか」という話になります。その時に、どのように暮らすのかという「住まい方イメージ」を共有し、各要求にきちんと優先順位をつけていくことが大事だと思います。

欲しかった部屋を諦めたり、二所帯で共用にする場合もあります。また、広さや高さも含めて1つの部屋の環境を良くすると、他の部屋の環境が制限されてしまう場合だってあります。建築家は魔法使いではないので、すべてをうまく解決することはできません。設計プロセスで優先順位づけを共有し、「住まい方イメージ」にあうよう空間の配置・配分を最適化した設計をすることが大事だと思います。

ほどよい距離感と関係性をつくる
このようなことを考えて設計を進めると、さまざまなタイプが生まれます。2軒の家が隣り合って建っている完全分離型のタイプ、玄関も2つあり分離しているが内部で相互に行き来できるタイプ。浴室など一部の水回りのみを共有するタイプ。一言で二世帯住宅といってもかなりのバリエーションが考えられます。どのタイプが良いというのではなく、恐らく一番大事なのは、2つの「いえ」の間にほどよい距離感をつくるということでしょう。それは、家族によって異なります。必要以上に距離感が離れたり、近すぎたりして関係性がうまくいかない場合もあります。うまくいく「ほどよい距離感」を見つけることも大事です。

写真(右)でご紹介する「本郷のシェアードハウス」は、老夫婦の住宅の上部に、単身者がシェア居住する賃貸住戸が設けられている事例です。同じ構成で上部が子世帯の住宅なら完全分離型の二世帯住宅となりますが、ここでは単身者4人がそれぞれの個室をもち、水回りやキッチン・リビングを共有しながら暮らしています。家族ではない4人と大家さん夫婦が同じ屋根の下に暮らしている訳です。ここでは、4人の個人のスペースと共有空間の間に、シェアードハウスと大家さんの住宅の間に、それぞれにほどよい距離感と関係性がつくられています。このようなタイプも含めて、これからは現代のニーズに合った住まいが多様なかたちで生まれていくのだろうと思います。
住まいの話題[400]執筆者
■田中 友章(たなか ともあき)/ 株式会社フォルムス

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