| 画像をクリックすると大きなサイズで見ることができます。 |
| 住宅設計と環境 |
近年、生活の中でエコロジーや地球温暖化問題などという言葉を本当によく耳にするようになりました。エコロジーへ向かう世の中の流れは住宅設計の現場にも届いています。
住宅の設計とは、どのような建物を建てるのかを考えることであるのと同時に、建物を使う人(=住む人)の生活のあり方を考えることでもあり、その生活が環境に与える負荷に大きく影響します。住宅を設計する段階でエコロジーを考えるのは当たり前、いえ、むしろ避けられない感がありますが、実際に設計の段階で様々な条件を満たした上に予算の範囲内でエコロジーまで配慮するのは、そうたやすいことではありません。 |
| エコロジーと覚悟 |
若いご夫婦からの依頼で住宅の設計に携わったときのことです。アメリカ人のご主人は特にエコロジーへの関心が高く、ご自分で新築住宅を造るにあたって、できるだけ環境負荷の低い住宅にしたいとの要望をお持ちでした。そこで様々なエコ仕様を検討し、提案しました。
エコと聞いてすぐに浮かんだのは省エネを助ける設備でした。ソーラーパネルの設置、地熱利用の温水設備など。ただしこうした設備は設備自体のコストに加え、荷重に対しての補強などにもコストがかかり、初期費用は思った以上に高くなりがちです。電気代などのランニングコストの低減で相殺できるかどうか検討してみても、利用期間によっては通常の設備と比べて割高になることもあるので覚悟が必要です。
建物からの放熱を抑えるという意味で提案したのが屋上緑化と壁面緑化でした。これもメンテナンスがあまりいらない物などいろいろ有りますが、少し気をつけなければならないことがあります。屋上緑化にセダム類を使っている例があります。セダムは水分を溜め込むことで屋上の灼熱の熱さに耐えて枯れにくいため、屋上緑化に好んで使われていたのですが、逆に水分の蒸発が少なく、気化熱を奪うことがあまりないため、ヒートアイランドの抑制効果は小さいのです。自邸の屋上緑化によるヒートアイランド抑制効果を真剣に期待している方は要注意です。私の様に個人的に緑を育てるのが好きな方にはあまり関係のない話かもしれませんが。 |
|
|
|
屋上緑化による放熱効果が あまり期待できないセダム |
ヨーロッパの住宅の ラジエーター |
| お施主さんからの要望で、意外だったのは照明に関するものでした。できるだけ発熱量の低い照明器具だけを使用して、二酸化炭素排出量を最低限に押さえたいという強い要望を受け、白熱灯やハロゲン灯は使わずに住戸内のすべての照明を、発熱量が低い蛍光灯やLEDで計画しました。従来、蛍光灯は青白く白熱灯は暖かみのある雰囲気をだすというイメージがあったと思いますが、最近では蛍光灯やLEDでも、白熱灯の様な温白色の光を出すものがあるので、住宅に合った雰囲気のある照明が実現可能となっています。 |
| 住み易さもエコロジー |
一言で「エコ住宅」と言っても、その意味はいくつかあります。一般的に広く認知されているのは、今まで挙げてきたような地球に優しい、つまり環境への負荷が少ない住宅だと思いますが、他に、住んでいる人の健康を害さない住宅や、長い間住み続けることができる住宅という意味も含まれています。そこで提案したのが輻射熱冷暖房、いわゆるオイルヒーターやヨーロッパでみかけるラジエーターのようなもので冷房も兼ねているシステムです。暖房の場合、輻射熱は部屋の床、壁、天井などの表面温度を上げ、その表面から二次的な輻射熱を放射するため室温があまり高くなくても快適な環境をつくることができます。また天井にファンを付けることで暖まって上昇した空気をかき混ぜ、均一な冷暖房効果が得られます。階段室の最上階に大きな窓を設けることで、住戸内の通風を促す計画としました。
エコロジーな提案の数々、お施主さんにも気に入ってはいただいたのですが、予算を大幅にオーバーしてしまい、まだ実現には至っておりません。エコロジーはコストがかかる、覚悟も必要。分かってはいるのですが、いつの日か、ローコストで敷居が低いエコ住宅を実現できる時代がやってくることを望まずにはいられないのです。 |
住まいの話題[470]執筆者
■服部 ひかる(はっとり ひかる)/ ハットリヒカル建築設計事務所 |