| 画像をクリックすると大きなサイズで見ることができます。 |
| 開口部の役割 |
住宅を設計する上で最も頭を悩ませる項目の一つに、開口部の問題があります。別荘地の様に眺望のよい敷地なら問題はありませんが、住環境が近年ますます悪化する住宅地などでは、開口部を設けるのが非常に難しい事となっていきます。開口部の役割は採光・換気・借景・外観デザインなど、かなり重要なポイントとなります。また住宅の規模によらず、平等に自然との連続性を確保する事が出来る唯一の要素でもあります。昔からそうですが、やはり周囲の環境を如何に取り込むかが、生活の豊かさにつながっていくと思います。
しかし、街を歩いていると、カーテンを閉めきった家を多く見かけます。熱環境の問題ではなく、見られたくないからです。プライバシーを無視した開口計画があまりにも多いためではないでしょうか。ここでは交通量の多い前面道路と三方隣戸というごく平凡な敷地条件で、一日中明るい事とプライバシーの確保という相反する要素を両立させた一例を紹介します。 |
| カーテンのいらない家 |
定年退職をむかえ、子育ても終えた施主からの依頼でした。以前までの家は、北側に駐車場があり、南側寄りに配置された陽のあたらない暗い家でした。多くの時間を家で過ごす様になり、一日数時間しか陽の入らない家にストレスを感じる様になった施主からの希望は、一日中明るい家、そして子供や孫が集える広いリビングというものでした。
大きな開口部を用意しても、プライバシー確保の計画が上手く出来ていないと、明るい家は出来ないと痛感します。プライバシーを確保する上で一番簡単な解決方法は、中庭タイプにする事です。しかし今回の計画では広いリビングが欲しいという事が大前提にあったので、違う方法でプライバシーを確保しなければなりません。また広いリビングは採光においても問題が生じます。一室の中に極端に明暗が存在してしまう事です。 |
|
|
|
| 栗橋の住宅の外部 |
栗橋の住宅の内部 |
以上の二点を解決するために、まず天井高を南側隣戸の屋根による陰の影響を受けない2.9メートルに設定する事から計画はスタートしました。そして南側以外はすべて2.1メートルまでは壁、それ以上は開口部とし360度開放しました。南側については全面開口部とするかわりに塀を同じ2.1メートルの高さでまわしています。近隣はすべて住宅用のサッシを使っているので、掃き出しサッシでもH寸法は2.2メートル程度なので、視線は交錯しなくなります。平面的な開口部の位置の検討ではなく、縦方向の処理によりプライバシーを確保した事になります。
明暗の問題に関しては360度開放した事で、直射日光だけでなく天空光も利用し解決しています。二階においては容積率の関係もあり、内部にデッキスペースを挿入することで、外部に面した開口部を設けず解決しています。また、より良い通風・換気を得るため、デッキ南面には可動木製ルーバーを用いています。
このように、居住スペースはもちろんの事、全ての外部デッキに関しても採光とプライバシーを確保した住宅となりました。360度開放したハイサイドのサッシは一日中明るくリビングを照らすだけでなく、日々の天気から四季の移ろいなども感じる事が出来ます。お隣の緑も拝借出来ます。遮光目的以外は「カーテンのいらない家」の完成です。 |
| モジュールの利用 |
今回の計画において、隣地三方の住宅すべてがハウスメーカーで建てられた住宅だった事が、大きな役割を果たしています。ほぼ共通の階高、2.4メートルの天井高、サッシ寸法などなど。すべて尺間法から始まった建材のモジュールで成り立っています。そのモジュールを逆手にとり、あえてはずす事で、プライバシーの問題を解決しているからです。このように周囲の環境や建物を十分に検討することで、開口部が本来の役割を果たすようになります。
周囲の住宅のモジュールを利用して計画したこの住宅は、隣戸にも面白い影響を与えています。一階と二階の中間部分にしかサッシがない外観は、街並に溶け込んでいるとは言い難いですが、隣戸の方もカーテンを開け放して生活している風景を見ると、生活の質という部分では調和しているのではないでしょうか・・・・。 |
住まいの話題[472]執筆者
■中村 和基(なかむら かずき)/ LEVEL Architects |