■住まいの話題[474]:ニュートラルな空間
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私は自宅の一室を事務所として仕事をしています。いわゆるSOHOというものです。

独立した当初は、これこそ最高の状況だと思っていました。通勤時間のロスも満員電車に揺られる疲労やストレスから開放されて仕事に集中できるからです。

しかし6年ほどの間に子供が二人生まれ、私の都合にお構いなしに乱入されたりするようになり状況も変わってきました。

住宅を設計するとき、その家族構成により部屋の数やリビングと個室の関係性をどうするかなどの条件が施主の方から提示されます。ここでいつも疑問に思うのが、今の最善が10年後、20年後も最善なのだろうかということです。

限られた条件(面積や予算)の中で、子供部屋をその家の中で最も条件の良い場所と広さを確保しても、将来子供たちが独立してしまえばそこは物置になってしまったりするものです。もちろん、子供の成長を考えれば、気持ちの良い空間の中でというのはおおいに賛成なのですが・・・。
中間領域
私の師である黒川紀章(故人)が40年前「中間領域」という概念を提唱されました。

それは日本人が古来よりもっていた「グレーの文化」つまり西洋哲学における「黒」か「白」かの二元論ではなく、その中間の曖昧な文化を建築空間に置き換えるというものです。私は住宅こそ、こうした手法で創るべきなのではと考えています。

「ニュートラルな空間」とはそのような背景を基に考えられています。求められる機能や用途が変更しても、対応できる空間創りができないだろうか・・・。

具体的な手法としては、「m2からm3へのシフト」「素材の吟味」「回遊性」が挙げられます。
エントランスと連続した土間空間を
主体とした住宅(KAH 2005)
内部、外部を貫く杉板の連続性で
2世帯住宅を再構成した住宅(KOH 2004)
m2からm3へのシフト
これは住宅の価値観を面積(平面)から体積(空間)へシフトすることです。住宅情報は間取りや面積でしか表記されず、本当の空間を認知することが困難なためです。我々設計者はプロですから、平面図や断面図といった限られた図面情報で頭の中で空間に置き換えることが出来ます。しかし素人である施主には中々難しい作業のようです。より良い住宅を手に入れるために、空間に対して施主自身が敏感に感じ取れることができる設計・プレゼ手法を、我々設計者自身が身に付ける必要があると感じています。
素材の吟味
建築空間を創り上げる素材とは、床・壁・天井を構成する材料の他、光や風といった外部から取り入れる要素もあります。そうした素材をどのようにブレンドするかによって、寸法的に同じ空間でも全く異なる雰囲気を創り上げることが出来ます。住宅を間取りで区切っていくのではなく、こうした異なる空間で区切っていく手法で創り上げていくことが出来ないかと考えています。
回遊性
都市型の限られた大きさの住空間では難しいですが、住宅内に2本の階段(ラダーのようなものでも)を設けることで住宅内に行き止まりを作らない手法。これにより、人の流れもとまることなくデッドスペースをなくすことが出来ます。もちろん、人の流れだけでなく光や風を循環させることで住環境を良好なものにすることも可能です。究極は大きなワンルームなのかもしれないと感じています。

私自身、現在も試行錯誤の状態ですが、いつかこうした手法が確立できたらと思いながら設計に取り組んでいます。
住まいの話題[474]執筆者
■阿部 泰道(あべ やすみち)/ 一級建築士事務所a-scope

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