■住まいの話題[480]:セルフインフラハウス
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自給自足の家
エコやロハスといった趣向もあり、近頃は食料だけでなくエネルギーや水も自給自足してみようという人も少なくないようです。庭で野菜をつくるように、太陽光発電や雨水利用などを取り入れてそれぞれのライフスタイルを楽しんでいるようですが、食料と同じくエネルギーや水も完全な自給自足となると難しくなります。

今回は、そのような自給自足の家を支えるセルフインフラについて紹介しようと思います。インフラとは道路や学校などの社会基盤施設の総称ですが、ここでは系統電力や上下水道など住宅に接続しているものを対象として、それらのインフラから自立して居住環境をつくることをセルフインフラハウジングと呼んでいます。
野菜を作るようにエネルギーを作ること、料理をつくるようにエネルギーを使うこと
家庭菜園では育てた野菜を収穫し食卓に並べる楽しみがあります。そのため、年間を通して収穫できる栽培計画や素材を生かしたレシピ、一度に食べきれない収穫物の保存など、次第にその技術も高度になっていくようです。これに対して、屋根に太陽電池を取り付けても系統電力につながったままでは「収穫量」を気にする必要はありませんし、コンセントから出てくる「収穫物」も見分けがつきません。ましてや採れたてで美味しいといったこともないので、自給自足の喜びや工夫につながりにくいものです。

しかしながら、系統電力から自立するとその事情も違ってきます。たとえば太陽光発電で電力をまかなおうとすると、夜間や雨の日のために電気を蓄えるバッテリーと補助的な発電機が必要になりますが、ライフスタイルの工夫次第で施設自体をコンパクトにおさえることができますし、光熱費も限りなくゼロに近づけることができます。また、系統電力を前提としないので、晴れた日にカレーをじっくり煮込んでも真にクリーンなエネルギー利用と言えるでしょう。あるいは、プリウスのようなハイブリッド車があれば、余剰電力を車の燃料に使えるし、逆に発電量が足りない場合には車を発電機として電力を供給することもできます。
ケーススタディーハウスのためのセルフインフラのシステムフロー
庭の畑と屋根の畑
農業の自給自足を庭の畑で、という訳にはいきませんが、セルフインフラでは戸建て住宅の屋根があれば自立が可能になります。太陽光や雨を集めるには屋根は打って付けの場所ですし、都市部にはない、郊外住宅地の資源と言えるでしょう。太陽電池と同じように雨水だけでは住宅で消費する水を満たせませんが、飲料や洗濯といった使用目的によって、雨水、再生水、浄化システムを使い分ける循環利用により、家庭で必要な水をまかなうことができます。
田舎暮らしか宇宙船か
ところで、エネルギーや水の自給自足となると、文明をさかのぼるような厳しい田舎暮らしが思い浮かぶかもしれません。あるいは最新技術を結集させた宇宙船のような家であれば砂漠や極地でも現代的な生活も可能でしょう。しかしながら、セルフインフラハウジングが目指しているのはいわゆる普通の暮らしであり、都市郊外の住宅に新しいかたちのインフラを提供することです。それぞれのライフスタイルに合わせて暮らしの知恵や最新技術を組み合わせたものがセルフインフラであり、セルフインフラハウスのデザインは住人のライフスタイルそのものとなります。
ライフラインをはずしてみる
電気や上下水道などのインフラはライフラインとも呼ばれていますが、文字通り、現代の住宅ではそれら無しでは生活できません。セルフインフラハウジングは住宅からそれらのチューブを引き抜いてしまおうという試みですが、その動機は二つあります。一つはインフラの維持更新の問題。人口減少により都市部以外の多くの地域が過疎化の傾向にある中で、これから戦後つくりあげた膨大な施設が次々に耐用年限を迎えますが、厳しい経済状況の中でインフラの維持更新のあり方が問われています。もう一つは環境問題。資源の有効利用や環境への負担軽減にセルフインフラは有効な手段です。そして、その試みが郊外居住をより自由で快適なものに、エコやロハスといったライフスタイルをより豊かなものにすると考えています。
住まいの話題[480]執筆者
■西井 励(にしい すすむ)/ エリップス・アーキテクツ・スタジオ一級建築士事務所

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