■住まいの話題[481]:普通の気持ちよさ
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私が家づくりをするときにいつも心がけていることがあります。それはバランスと調和、そしてメリハリです。

建て主の要望やその環境を解釈して、性能、機能、法規、コストなどを調整し自然光を効果的に取り込み、視線の抜けや眺望で開放感を演出し、風の通り抜ける工夫をしたり、外部空間を取り込んだり、生活動線や使い勝手など・・・、気持ちよく暮らすためにはいろいろな要素が絡み合い家は成り立っています。それをより大きな視点で考え、住まいを構成する様々な要素がコストも含めバランスよく調和しているか、空間に魅力を強調するようにメリハリが効いているか、といったことを常に念頭に入れてつくっています。
バランス・調和
家づくりには、やり過ぎないちょうどいいバランスが必要だと思っています。

いろいろ検討を重ねこれだと思う考えが出てきたときに、その思考から一旦引いて客観的にそのことを見てみる。そうすると使い勝手はいいが性能的にはどうか、意匠的には美しいが意匠を優先しすぎて他の部分に無理が生じてないか、また、無理をしてでもそのデザインを優先すべきか、そのデザインはコストがかかり過ぎていないか、そしてこのコンセプトに間違いはないのか、など何度も繰り返し検討します。部分的な検討から全体的な検討へ、この繰り返しの中でより純粋な形、本質に近づいていくと思っています。
メリハリ
だからといって何もかも平均的に取り入れるのはどこかに無理が生じて何がやりたいのか見えなくなる。それに現実的には避けては通れないコストの問題もある。
八ヶ岳別荘:自然素材をラフに生かして。 昭島の家:既存のRC車庫の躯体を表し、
素朴に仕上げた。その先はサンル−ム。
そこでメリハリが重要になります。“ここぞ”というところは大胆に魅力を強調し、他の部分は観点を変え割り切りながら、様々な要素を総合的に検討して無駄をそぎ落としていきます。そうした過程の中で純粋な形、本質が見えてきます。

しかし、形態にこだわり過ぎると構造的にコストがかかり過ぎ、その犠牲として性能を落としたり、機能や使い勝手に無理が出る可能性があります。また、デザイン過剰でトータルバランスが崩れて一方に偏ったものは、意図したライフスタイルとはかけ離れた実生活となり、長くは続かず無理が生じてくることもあるでしょう。
自然体
私は「欲張らずやり過ぎないちょうどいい感じ」、この感覚を大切にしています。

洗いざらしのGパン、白の無地T、スニ−カ−などのコットンや革の自然な風合い、着たり履込むごとに味が出て表情を変えていく、時を経て輝きを増すような素材、それを合理的に質実剛健につくり込んだシンプルで定番的なものに惹かれます。

それはさりげない、片意地張らないラフな感覚で使えるものたちです。それら身の回りで使うものと家も同じだと考えています。使い込んでいきながら味が出てくる素材、性能もほどほどで生活するのに無理がない程度のシンプルな設備、そしてなによりも長く付き合っていける居心地のいい空間。

家づくりは気張らず自然体で、ここが大事なところですが「やり過ぎないちょうどいい感じ」でいきましょう。そんな普通の気持ちよさを目指しませんか。
住まいの話題[481]執筆者
■市川 幸一郎(いちかわ こういちろう)/ 設計工房素楽

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