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第二吉本ビル設計時の中心的なコンセプトをお聞かせください。
原田 — 既存のヒルトンプラザ(吉本ビル)が17年前に建設されたときのことは大変印象に残っています。
緑が少ないと言われている大阪に、緑と光の溢れるアトリウムが登場したのです。
以来大阪人ならヒルトンで待ち合わせといえばどこを指しているのかわかるほど親しまれてきました。
その親しまれたイメージを継承、発展させていきたいという思いから、
ガラスを中心とした光と緑に溢れた建物をつくろうと考えました。
また、隣接のハービスENTは複数のヴォリュームが積み重なって全体が構成されています。
そのビルと比較してアイデンティティを確立する意味もあって、
高さ100mのシンプルなひとつのガラスのヴォリュームを立ちあげることにしたのです。
建物は全面ガラスのカーテン・ウォールで覆われて、視線がよく通ることが大きな特長ですね。
原田 — ガラスは一般的にショップにとっては対応しにくいものでもあります。
というのも窓側にものが置けない、西日が入るなどのネガティブな評価がありましたから。
しかし私は建築内部の商業空間はもっと都市とつながっていないといけないと考えています。
今の施設は開発が大規模になるほど外観とインテリアがどんどんはなれていく傾向にあります。
外部は外部だけでデコレーションが完結し、内部の店舗通路などは内部だけで検討される。
そこで今回、外観は透明度の高いシンプルな壁面で構成することで、
内部のアクティビティそのものが建築の表情となるような意匠を考えたのです。
ビル内の活動が終了した時間帯もデザインしています。
たとえば、オフィス階では退出時消灯すると、外壁ダブルスキン内部に設置されたハロゲンランプが点灯するしかけ。
夜が更けるにつれてハロゲンの暖かい色が増してゆき、夜中にはそれがフェードアウトして眠りにつくようなオペレーション。
人間の営みが建物に表情をつける。
キーワードは、ヒトです。
プランニングについてお聞かせください。
原田 — ショップが入る低層部とオフィスの高層部では違う構成をとっています。
低層の商業ゾーンは中央にエスカレーター、その周辺にショップを配置。
それらのヴォリュームの隙間はできるだけ光と緑を取り入れる工夫をしています。
たとえば、フロアの奥にも小規模の吹抜けをしつらえ、光や視線を通したり。
6階の外部デッキも、そうした都市の街路がもっているアメニティを少しでも取り込むために用意したものです。
メインエントランスには地下と地上を貫くような大きな吹抜けのアトリウムをつくりました。
そこには緑の植栽が導入されて、地下からアプローチした人を光と緑でお迎えするというカタチを実現しています。
高層部のオフィス階プランは矩形。
エレベータのコアをオフィスと分離することでオフィスの4面採光が可能になっています。
またエレベータ・ホールやトイレ、給湯室などのユーティリティ部分も直接窓に面して自然光を取り入れられます。
内部でも光や視線を通りやすくして、各室や通路が閉ざされない計画にされています。
そのため内部にもガラスがよく使用されています。
このガラス素材には何を求めて、どのように選択されていますか?
原田 — ガラスの透明度に関しては、高透過なものでも緑色がかっているものでも、またはLow-Eでも ケースバイケースでどの選択肢もありうると思います。
ここではフロートガラスを使っていますが、その無垢さ、単純でピュアなところがいい。
しかしLow-Eガラスは表面の色と中の色が違い、ひと加工かけている感じがします。
そのように加工しているものはガラスらしさを表現する部分には用いず、
オフィスという機能に対応した機能部品(デバイス)として必要箇所に用いるという考え方です。
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エントランス広場 |
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  終業後のオフィスにオレンジのハロゲンランプがともる。 |
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地下1階。エントランス広場地下から上る「グリーンキャスケイド」 |
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  エントランス広場地下と吹抜け |
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上下動するエスカレーター内部機構をバックライトで手前のガラスに映し出す。 |
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共用スペースのビジュアルコミュニケーション |
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ダブルスキンに囲まれる明るいオフィス階 |
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窓に面した直接採光が可能な給湯室 |
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自然光を取り入れられるオフィス階用エレベーター・ホール |
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