自然史、博物学は、「体系立てて分類する」ことが基本的な所作である。 したがって旧来の博物館ではその行為を具現化した標本づくりがおもな構成上のコンセプトとなっていた。 しかし今回の展示では、人の一般的な直感や自然のままの状態を具現化したいという博物館の新しい考え方が反映されている。
3Fに展示されている「大地を駆ける生命」展示は、哺乳類を進化の頂点としてその多様な種をひとつの巨大な空間に収めた。 この標本群はひとつの大きなオーバル形のガラスケースに収められている。 たとえばこのガラスケースが存在しない展示を考えてみよう。 もちろん標本の保存性、メインテナンスに問題が発生することは言うまでもない。 しかしそれを抜きにして考えてみても、やはり物足りなさを感じるのではないだろうか。
広大なフロアに剥製が並べられているだけの展示。 それはニューモデル・カーが並んでいる広大な見本市会場に似てはいないだろうか。 空間全体が生み出す意味や特性が希薄だ。 それに対し、この展示は巨大なガラスの曲面が、ひとつの結界となって、哺乳類が群で存在する世界を表現している。 ガラス下辺にそって設置されているLED照明のラインもその境界の意味づけを明確にする。 ガラスの存在自体が哺乳類を一抱えに認識してみる鑑賞行為を誘発する演出ともなりえている事例である。
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