鋸南の家概略 Close

幅約5mのピクチャーウィンドウはデッキ・庇を介して南側の庭に面している。床のレベルは地面から1,050mm上がっている。
 
東側から見た全景。手前の田んぼから背後の山に向けて吹く強い風をゆるやかな勾配の大屋根が受け流す。
     

「鋸南の家」は都心に暮らす家族の週末住宅、そして定年後の住まいとしてつくられた。敷地は温暖な気候に恵まれ、南側に緑豊かな土手、のびやかな田んぼ、そして背景に山並みが連なる美しい風景が広がっている。建物を印象づけるのは、この風景を切り取る幅約5mのピクチャーウィンドウだ。この大きな窓は、サッシをすべて戸袋に引き込み全体を開放することができる。窓越しの風景をより美しく見せるために床レベルを地面の高さから約1m上げて目線を田んぼの高さに合わせている。この高床は、かつて田んぼであった多湿な土壌への湿気対策としても有効である。

建物は平たい箱型で、屋根がゆるやかに傾斜しながら背後の丘から土手に向かって伸びている。この形状は風を受け流す効果を狙ったものだという。風景になじむようにかけられた大屋根が地域特有の強い南風を受け流し、室内には田んぼを経由して涼しい風が吹き抜ける。省エネ設備としては、太陽光発電、雨水利用タンク、オール電化システムを取り入れている。光や風、雨といった自然エネルギーを活用しながら自然の恵みを享受できる住宅だ。

写真:鳥村鋼一