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アーキテクトルーム

■住まいの話題[24]:視線の通り抜ける空間
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nLDKという住居形式

どういう目的にも使える、畳の部屋の集積とでも言える伝統的な住居形式から、戦後の急激な変遷を経ても、日本の住宅はそれにとって代わる安定した現代の住居形式を確立したとは言えない。しかし一般的には一応LDK+n×BRという、目的別の部屋の集積としての住居形式が普及しているように見える。

nLDKというこの一般化した形式の中で、寝る事を主体に個人の場としての目的のはっきりした寝室や子供室といった個室を除くと、K→D→Lの順で、その部屋の目的が次第に曖昧になる。設計する側にとっては、この曖昧になる順に逆に住居=建築=空間としての重要度が増してくるように思う。すなわちこれら自由度のある部屋をいかに作るかによって、その住宅の建築としての豊かさが決まってくるといってもよい。

広いコモン・スペース

限られた面積をいかに使うかという点と、現代の家族それぞれの忙しさから、一日の中で家族が揃っていられる時間が限られている事など考えると、LDはKも含めて出来るだけオープンにするのがよいと思う。人によりキッチンの乱雑さを見せたくないとすれば、半分だけ隠すなどして、出来るだけ空間は繋げたい。というのは、限られた面積の中で、LとDは(Kも含めて)、コモン・スペースとして、出来るだけ広がりを持たせたいと思うからである。

とにかくこの、広さ、あるいは空間の奥行の長さでもよいのだが、視線のすーっと通り抜ける空間が欲しい。そのためには、時には個室の面積を犠牲にしても構わない。絶対的な面積が足りない場合は空間を細長いものにしたり、1、2階を逆転して、2階にLDをとって、勾配屋根の形をそのまま天井にあらわして、垂直方向の広がりを獲得する方法もある。とにかく絶対的な広さ、あるいは心理的な広がりが是非欲しい。

レベル差による空間の広がり
垂直方向の空間の広がり
外部の部屋
心理的な広がりを獲得する方法としては、LまたはDから同じレベルで出られる、タイルやデッキ材を張った外部の部屋とでもいうべき、囲まれたコートを作る手もある。外でする食事は何故か、とてもおいしい。たとえ狭いスペースでもプライバシーの守れる外部スペースは非常に有効な広がりをもたらす。そこが食事空間としてはめったに使われないとしても、視覚的な広がりを、LDの連続としてつくれれば心理的効果は大きい。
ただ“居るだけ“の場所

住宅の中でもっとも目的の曖昧な空間、ただ“居るだけ“の場所である居間=リビングは、曖昧であるからこそ最も重要である。そこは家族が無為に時を過ごす、目的のない無駄なスペースである。ここをどれだけ無駄に作れるか、が居住空間の質を決めるように思う。このスペースに画一的な応接4点セットを置くなど、もってのほかである。何もなくてよい。家族のそれぞれが、ゆったりとつながりながら、勝手に自分のしたい事をしている風景が、僕の思い描く居間の景色である。それにはなるべくガランとした、空間の広がりがあった方がよい。

ダイニングとリビングの関係はどうあるべきか、とかキッチンはオープンか独立型か、などという使われ方の問題よりも、単純に空間の広がり、大きさ、長さ、といった空間の量、視線の通り、空間の屈曲、レベル差などの、機能とは関係のない空間の質の方がずっと重要だと思う。人の動線や使い勝手を徹底的に検討して出来た機能的なLDも、ガランとした広がりのある、何もない空間の広がりにはかなわないと思う。

住まいの話題[24]執筆者
■小川 守之(おがわ もりゆき)/(株)小川守之建築・設計事務所


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