Javascript is disabled.


アーキテクトルーム

■住まいの話題[256]:「日常」ト イフコト
画像をクリックすると大きなサイズで見ることができます。
住宅をデザインしていくことは、つまり、その住宅を使う方の日常をデザインすることだと思っています。その日常をデザインしていくためには、その方のコトをいろいろ知らなければデザインしようがないので、とにかくいろんな話をしていきます。そのコミュニケーションが、我々がデザインしていく上では必要不可欠なのです。

と言っても、自分の日常のコトをキチンと語れる方は多くいません。そういう私自身もちょっと怪しかったりする。それは自分自身の無意識を掘り起こす作業であり、もっと言うと、自分の過去から未来を明確にしていく作業であったりします。

施主の方が我々設計事務所の人間と会う時には、たいてい頭の中がちょっと飽和状態気味(それも沸騰寸前)だったりして、「子供部屋は8畳以上で・・・」とか「あの収納に棚を付けてもらって・・・」など、とてもじゃないけど自分の日常を振り返ることまでできない。もちろん、そういうことも「自分の家」を持つためには外すことができないことかも知れないけど、自身の過去、現在、そして家族との未来を見つめるチャンスを逃してほしくないと考えています。それが日常を考える、ということだと思うのです。
タイヘンな「日常」
でも、それって結構大変ですよね。家を建てるって、考えなきゃいけないことが他にも沢山ありますから。しかし本当に自分自身の家を手に入れるためにはやるしかない。だからいつも施主の方には、最初に“家を建てることは本当に大変なことです。まして設計事務所に依頼するともっと大変になります。一緒に頑張りましょう”とお話させていただいています。そのために私たちがいるのですからと。
渋谷S邸:
1・2階がRC造、3階がS造の構成
渋谷S邸:
光のインテリア
「日常」って言葉は、もしかしたら普段とてもネガティブに感じられるかも知れない。けれど「日常ってそんなにツマラナイものですか?」と思うのです。そしてそれであれば、もっともっと毎日が楽しくなるような家を作れると思うのです。毎日がパーティーである必要なんてないけれど、毎日を心から実感できる家であったら、それは、私たちにとっても嬉しいことです。
ジブン達の家
いろいろお話を聞いていくうちに、皆さんそれぞれ結構おもしろい日常を過ごされていることがわかります。そしてそれは、その家族の将来に向かっての夢をいっぱい含んでいるものだったりします。

「将来」と言うと、皆さんたいていお子さんのコトをお話されます。「あと何年で○才になって・・・」とその時の状況を一緒に想像したりして、子供達のスペースを考えます。ただいつも思うのです。“子供部屋って本当に必要ですか?”と。

仮に今12才と9才のお子さんがいるとして、15年後に二人は27才と24才。立派な社会人になって独立してしまい、彼らの部屋はただの物置きなってしまった、という家は少なくありません。家のローンもそこそこ残っていて、そう簡単にはリフォームもままならないし、何よりその時に自分達がどうなっているかもワカラナイ。多くの家が「物置き」だらけだったりします。

「子供部屋なんていらない!」という気はサラサラありませんが、もっともっと「ジブン達の家」でいいのだと思うのです。近い将来一緒に暮しているかどうかわからない家族のために、自分達の空間を削ってまで考えるのではなく、もっと自分達本意に、自分達の近い将来のために、どんな暮らし方をしていきたいのか、そのためにはどんな家であるべきなのかを考えてもいいのだと思います。それが家族の将来を考えることにもなる、と思っています。

だって、ジブン達の家が家族のための家でない、なんてことはないのですから。
住まいの話題[256]執筆者
■内山 章(うちやま あきら)/ タステン一級建築士事務所/ スタジオA建築設計事務所