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アーキテクトルーム

■住まいの話題[365]:建てること
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現場の知力
工業製品の開発において、技術の進歩により試作等が減り、従来の「現場の知力」の継承が難しくなっていることが心配であるとの記事を読んだ。そのような現象は、品質の低下を招くという指摘である。

建築家の設計する“あなただけの家”は、試作も大手メーカーのような膨大なシミュレーションとも縁のない、多少過大な言い方をしてしまえば、設計・職人・監督という「三者」の「現場の知力」だけに品質を依存する住宅です。「現場の知力」が継承されないことは、心配どころかゆゆしきことになるという差異が工業製品との間にはあります。建築家に依頼する施主は、市場の住宅に要望と一致する物がなくたどり着くケースも多くありますが、品質の決定に占める「三者」の「現場の知力」の重要度を実感していくこととなります。
施主
施主は建てる場面ではお客様であると同時に、読んで字の如く「三者」を従える「ぬし」となるのです。「三者」を揃える初めは建築家を選ぶことでしょう。建築家は要望を聞いて図面や模型で示し、それを何度も繰り返し「ぬし」の“建てたい家”の準備を整えていきます。プラン・予算・工期と「ぬし」は決断だらけです。そして準備の仕上げとして、残りの「二者」を選ぶのです。この「三者」の「現場の知力」が“建てたい家”の品質を担ってゆくのです。
「建てる」と「買う」
さて「ぬし」を含めた「四役」が揃いました。図面が設計から監督・職人へとつながり、「現場の知力」を合わせ、家を作っていきます。試作もなければ膨大なシミュレーションもない“あなただけの家”なのですから、まだまだ判断をいただかなければならないことも生じます。住宅一軒で延べ1000人も関わります。ひらめきや気変りや不可抗力もたくさんあるものです。無いと言っている人がいたら、その人は信用しない方がいいでしょう。
住宅の成長過程:1999.08現場進行中・1999.11竣工・
2003.04薄型テレビにあわせて家具工事・2006.08内装工事(ガラスの扉ほか)
建築家が専門家としてコントロールをしていくのですが、感覚・倫理・道徳、ややこしいこともよくおきるのです。それを「四役」が組して選択していかなければならないので、とても手間のかかる作業です。ですから、めんどうくさいのはいやだけど・・・と我慢を覚悟で「建てる」くらいだったら、最初からそういうおそれのない工業化住宅を探して「買う」方がずっと幸せだと思います。デザイナーズ建売なるものもあります。

“あなただけの家“が「四役」にとって愛着のある家になっていく現場なので、その過程を楽しんでいただけるように心掛けたいと建築家は思っています、それでも「建てる」と「買う」の違いは、「施主」になるのか「消費者」になるのか、大きく負担の違う行動なのです。
家の生涯
念願の“あなただけの家”が完成します。そして、まだまだこの役者達による物語は続いていきます。住宅には各種のメンテナンスも必要です。これもまた、めんどうくさがる方がいてもしかたないのですが、事実です。是非、愛着ある家にその都度磨きをかけることも楽しんでいただきたいと思います。

技術や人の価値観・プライオリティは変化していきます、「住む」の過程でも、ひらめきや気変りや不可抗力は変わらずに生ずることでしょう。時には、建物の構成をがらりと変更したい場面もあるかもしれません。これらに同じ建築家や監督・職人が関わるのか否かは、“あなただけの家”に対する「現場の知力」の違いがあります。そしてなによりも、関わった人が愛着をもって接し続ける“あなただけの家”とそうではない“建物”とは、その後の「家の生涯」が大きく違うのは容易に想像していただけると思います。

つまり、「四役」の人の意識・愛着が重要なことを知っていただき、施主として建てることで、「家の生涯」を幸せなものにできるのです。それが「建てる」ことの喜びでもあると思います。そして、「家の生涯」とずっと関わるということは、何を隠そう、建築家の生涯のことでもあるのです。私達にとって大切な仲間と呼べる「四役」でありたいのは当然です。
住まいの話題[365]執筆者
■原田 賢一(はらだ けんいち)/ (有)コンパクツ


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