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アーキテクトルーム

■住まいの話題[554]:サスティナブルな工法が作り出す新らしい空気
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サスティナブルな工法とは
住宅のサスティナブルデザインに関心があります。サスティナブルデザインが地球環境に配慮した方法だという前提があっても、サスティナブルデザインによる住空間が備える空気の質に、新しい可能性を感じるからです。

例えば、住宅のシェルターと蓄熱層のデザインについて考えてみます。シェルターのサスティナブルな工法としては外断熱工法と通気工法があります。また、蓄熱層のサスティナブルな工法として蓄熱式床暖房システムがあります。これら工法の利点についての一般的説明としては、外断熱工法はシェルターのヒートブリッジを無くし、室内の熱環境を屋外の熱環境に左右されない安定した環境に保ち、室内環境をコントロールするのに費やすエネルギーを少なくできため省エネルギーにつながります。また、躯体を断熱材で包むので耐久性能が上がります。

通気工法は、外装材から壁内に向けての輻射熱を通気層で排熱(徐湿も行う)することで、やはり室内の熱環境を安定させます。また、蓄熱式床暖房システムは大きな熱容量を持つ基礎コンクリート等に蓄熱するため、外断熱工法と併用することで一度貯めた熱は失われ難く、輻射熱によって室内に放熱し室内環境をコントロールするので、エネルギー効率がよく省エネルギーになります。

ただ、これらの工法の省エネルギー性能よりももっと可能性を感じるのは、工法を採用してデザインされた空間の空気が、従来の工法を採用してデザインされた空間の空気と比較して、遥かに開放的な感覚を覚えることです。ここで言う開放的な感覚とは、大きな開口部から外の景色がよく見えるといったような、住宅のある部分が外部空間とつながるということとは異なります。それは住宅全体が備えている空気の質が、穏やかな自然の中に身を置いた時に感じるような、五感全体でとらえられる開放的な感覚をもたらしてくれるというものです。
サスティナブル工法採用住宅(筒の家)の外観 サスティナブル工法採用住宅(筒の家)の内観
新しい空間の感覚
従来の工法を採用してデザインされた空間の空気は不安定でムラがあるため、その中で過ごす時間や場所によって暑い・寒い・湿気がある等の感覚を人に起こさせます。それをコントロールしようとする時に生じるエアコンの気流等も、人に何らかの感覚を生じさせます。これは空間の空気がいろいろなかたちで、過ごす人に主張をしてくるような感覚となります。

ところが、サスティナブルな工法を採用してデザインされた空間の空気は、基本的に輻射によりコントロールされているため非常に安定していてムラがなく、空気に対する過剰な感覚を意識しないため、ほとんど何もないかのようで、主張してくるようなことはありません。これは空気が均質・無機質で何も感じないということではなく、自然の中に身を置いて川のせせらぎがバックミュージックのように聞こえてくる時に感じる、開放的な感覚に近いでしょう。

また、窓を開けて屋外の空気を室内の空気に混ぜようとすると、従来の工法でデザインされた空間の空気は屋外環境の影響を受けやすく、その質が大きく変化してしまいます。それに対して、サスティナブルな工法を採用してデザインされた空間の空気は、屋外の影響を受け難く、その質も大きく変化することなく内から外に対して滑らかに変化して、空気の穏やかな連続感を創り出します。そのような内と外の空気が滑らかにつながる空間を想像すると、これまで感じることができなかった開放的な感覚が空間全体に生まれてくるのです。

これは、サスティナブルな工法が創り出した新しい空間の感覚です。サスティナブルな工法の採用や省エネルギー性といった定量的な利点を主張する時代ではなく、そのことは既に前提となっています。その先に、サスティナブルな工法が創り出す新しい空間の感覚を積極的に創造しかたちを与えていくことが、これからの住空間に求められているのではないかと思います。
住まいの話題[554]執筆者>
■岩堀 未来(いわほり ひでき)/ 岩堀未来建築設計事務所



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