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アーキテクトルーム

■住まいの話題[570]:この頃 考えていること
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衣食住
この言葉は「生活をしていく基礎」ということでしょうが、意味するのは、生活していく(=生きていく)のに必要なのは衣食住であり、このうちのどれかひとつでも欠けたら暮らしていけない(生きていけない)とか、最低限必要なのはこの3つだとかいった、そういうことではないと思うのです。

着るもの(着ること)、食べるもの(食べること)、住むもの(住むこと)は本来的に一体で、そのなかでいろんなバランスをもってその人の中に存在しているのだと思うのです。衣食住が自分にとってどういうものなのかを考え、具体的な選択を繰り返していくということが、生活していく(生きていく)ということなのだろうと思うのです。その選択の違いが人それぞれのライフスタイルをつくり、結果として、その人の人生をつくっているのではないでしょうか。

一般的に、住宅はファッションやグルメといったものに比べると日常気軽に試すわけにもいかず、実際手に入れるまでには大きなお金とたくさんの時間が必要となります。そしてどんな空間を獲得しようかと考えたとき、他に選択肢を知らない、または想像しきれない、あるいはまったく自分の自由にならない、または小さな要望がたくさんありすぎてうまく選択しきれないなど、そういった人がほとんどではないでしょうか。

住宅も、出来上がったものを実際に見て購入するのであればまだ分かりやすいのでしょうが、目の前にあるものが既に小さな枠組みの中にあるものの単なるバリエーションであり、その中でしか選択できなくなっているということに気づいている人は、それほど多くはないと思うのです。

「住めば都」という言葉がありますが、この意味もまた、乏しくはき違えた解釈をしたくないなと思います。
MA HOUSE:前面道路側ファサード MA HOUSE:リビングからの広がり
そういう住み手の問題とは別に、実際問題として、建築基準法の大改正(決して改「正」とは思わないのですが)という段階を経た今日、私たち建築家にとっても、自由な空間を実現することがこれまでにも増して難しくなってきています。私はこのような状況が、これからの日本の建築の質を低下させたり、可能性を大きく閉ざしてしまうではないかと、日々の仕事の中で実感して大変落胆しています。

ただこういう状況だからこそ、住み手も創り手も発想はもっと自由であるべきだと私は思うし、生活をしていく場所=生きていく場所にこだわりをもって、小さな可能性でもひとつづつ形にしていく姿勢を持ち続けたいと思うのです。
建築家としての誇り
イギリスの元首相ウインストン・チャーチルの残した言葉に、「建築は人によってつくられるが、人は建築によってつくられる」というのがあり、私はこの言葉が大好きです。その視点に立って考えてみるならば,衣食住の「住」は「衣」と「食」も包括するものと捉えることができるのではないかと思うのです。建築家は歴史や社会のなかでまさにその「住」を担っていて、その意味で私はこの仕事に誇りをもっています。

「住」における自分の形を実現するにはたくさんの人と関わっていかないとなりません。これが楽しみでもあるし、醍醐味でもあるのです。住み手の方たちと歩幅を合わせながら、形にするまでのプロセスを一緒に歩んでいけたらと思っております。
MA HOUSE
前述の様なことを考えながら、極めて最近携わらせて頂いた住宅を御紹介します。とても大らかで快活な体育会系家族の与条件に応えるために床を半層ずつずらしていくスキップフロアの構成です。全体はいつでも一室空間になりますが、その全体は決して一律ではなく、個性をもった空間群が立体的に重なりながら連続しています。
住まいの話題[570]執筆者
■小川 リエ(おがわ りえ)/ 小川リエ建築設計事務所



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