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アーキテクトルーム

■住まいの話題[571]:病院で生まれ、そして臨終を迎えるいま、改めて住まいとは
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私たちを取り巻く環境が変化している現在、家づくりを考える上では、「家は何をするための場所なのか」と少し考えてみることも必要だと思います。
家のもつ役割
お産婆さんに取り上げてもらって自宅で生まれたという人は、身近にどの位いるでしょうか。また自宅で身内の臨終を迎えたという話しを最近聞いたでしょうか。自宅での結婚式に招待された経験はありますか? そしてお葬式はお寺やセレモニーホールでということも多くなってきました。旧来これら人生のイベントは、自宅や地域で執り行われていました。もちろん現在でも続き間の座敷があり、お葬式や結婚式を行っているという地域や家もあるかと思います。しかし都市部の多くでは、これらの機能は、家からそれぞれの専門施設へと移行されています。たまたま家で息を引き取ったとしても、法律上「死亡」が確認されるのは、病院へ遺体が移されてからということが多いようです。

私が設計や調査で滞在したオランダでは、出産は病気ではない!という理念から、自宅出産が一般的です。妊娠すると自宅へ、ゴム手袋などの入った出産キッドが郵送されるそうです。もちろん何か異変が起きた際は、速やかに病院でケアが受けられるよう整備はされています。

また江戸時代の下級武士の住まいの平面図を見ますと、決して広くない間取りに、味噌部屋、染め部屋があります。間取りから生活の様子がみえてきます。
第二子の自宅出産に備える
オランダの同僚、お腹のグリーンは腹巻き。
HouseA:事務所併用住宅の外観、模型での
デザインスタディ、縁側のような玄関ホール
モンスターハンター
先日友人宅での集まりで、新鮮な風景を体験しました。ダイニングでは数人が食事を囲み談笑し、隣のリビングでは大きなTVに向かって2~3人がモンスターハンターというゲームに興じているのです。同じ空間に一緒にいるのですが、この二つのグループは異なる次元に属していました。このゲームは、兵士であるプレーヤー(自分)がモンスターを銃で撃ち殺していくというゲームです。さらにネット接続等で、よその家のプレーヤーとつながって、一緒にモンスターに立ち向かうこともできます。つまり一つ屋根の下にいたとしても、美味しい食べ物をツマに会話するダイニングの人々と、リビングでモンスターを狩っている戦士たちとでは意識の上では異なる空間を体験しているのです。

最近、家電話は象徴的な置物となり、携帯電話は空間を飛び越えて物理的な食卓でのコミュニティーを侵食し、電話の相手を拘束する手段として機能します。みなさんも似たような体験を電車の中やオフィスなどで経験されたことがあるのではないでしょうか。
住宅をホームという場所に育てる
現代は旧来の家に比べて、これがなくてはならないという機能が少なくなっているように思います。ただ私は決して伝統家屋を否定しているのではなく、縁側や仏間のある空間は個人的には気に入っています。しかし、一方でバーチャルなコミュニケーションが私たちの生活を多かれ少なかれ侵食する現代の家では、旧来のイメージに囚われない家づくりがあってもいいのではと思います。

例えば、「ダイニングはゆったりとるけど、リビングはなくして、その分大きなテラスのあるホームにしよう」とか。「どうせ学校はフローリングなんだから、うちには大きな畳のスペースをとろう」など。その家族ならではのホームのあり方があってもいいのではと思うのです。そして何より商品としての住宅を買うのではなく、完成してから年月をかけてその住宅を育てていこうという思いが大切ではないかなと思います。

HouseA(写真右)は、1F事務所2F住宅という働く場所と住まいが一緒になった建物です。施主の思い入れのあるタイルとコケを外観に用いました。コケや玄関の蔦の生長を見守りながら、ここにも一つ個性的なホームが育ちつつあります。
住まいの話題[571]執筆者
■永峰 麻衣子(ながみね まいこ)/ 永峰綜合計画事務所



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