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アーキテクトルーム

■住まいの話題[572]:軒と縁
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私にとって「軒と縁」はとても気になる部分です。

漫画サザエさんの家の縁側は、タラちゃんがタマと遊んだり、波平さんが伊佐坂さんと碁を楽しんだり、毎回のストーリーにアクセントをあたえる場所として描かれています。高温多湿で「夏を旨とした住まい」 が必要だった日本では「軒と縁」は環境をコントロールするための必要不可欠な要素であり、部屋と庭・人と自然の良好な関係を持続するにはなくてはならない部分でした。

軒には夏の直射を防ぎ、雨を凌ぐ役割。縁には庭と部屋・部屋と部屋をつなぐ導線としての役割があり、冬は温室のような空間にもなる。「軒と縁」には家と自然の境界を調整する機能がありました。そして、深い「軒と縁」がセットになることで、家の中からの視界を限定し庭へと意識を移行させ、部屋に奥行きと・開放感をつくる空間効果が生まれました。「軒と縁」によってつくられる、低く抑えられ水平に広がる視界は安心と心地よさを感じさせてくれます。
主役と共にあるヒロインとして
そんな良いところばかりの軒と縁ですが、現在では経済理由や面積的な理由から余剰な部分〔わき役〕として住宅の要素から排除されることが多いようです。しかし、私は住宅の設計の中でその余剰の空間である「軒と縁」に新たな役割をもたせながら、主役である部屋とともに生活(ストーリー)を盛り上げるヒロインとして積極的に提案をしています。
奥行き1.8M+軒の出1.2Mの広縁。
雨戸をしめると一部屋になる。
中庭を囲うような側廊状の縁側。
例えば、2世帯住宅の「姉妹の家」では、縁側は積極的に両世帯をつなぐ役割を持った重要な空間として機能しています。それぞれの世帯は、中心とその周辺をもつ平面構成で、2世帯を並べ雁行配置しています。その周辺の一部を広縁として利用しました。広縁は奥行き1.8 Mでこの部分はアルミサッシュを利用した光の透ける雨戸を設置してあり、冬には室内の延長の温室になるよう考えています。通常は居間・食堂の延長としての縁側として使われますが、雨戸を閉めると両世帯共通の一部屋に変化します。

また、「回廊の家」では、部屋と庭の中間に挟まれた縁側ではなく、中庭を囲う回廊状の一部とすることで、中庭を室内と同等の空間として演出する役目を持っています。側廊状の縁にかかる軒が、室内の天井と連続していて、そこに穴を開けて部屋の中に庭を造ったような空間です。中庭に蚊帳場の網戸カーテンを設置すると、夏場は縁側は外廊下として機能します。

その他、傾斜地に建つ「見晴らしのよい家」では、庭ではなく空と向き合う大きな縁(テラス)をつくったり、奥行きのある敷地に建つ「大網の家」では、深い軒と庇が空間の骨格になったりと、それぞれの状況と生活に応じた役割を持った場所として設計しています。
あらためて「軒と縁」
農家であった私の祖父の家にも大きな縁側と深い軒がありました。夏には軒の先端にすだれを掛け涼をとり、冬は日だまりの中でよく遊んだ記憶があります。

日本住宅における一般的な建築要素でありますが、自然エネルギーの活用や、自然と部屋との良好な関係を設計できるアイテムとしてだけでなく、生活を楽しくする機能を加える等、あらためて「軒と縁」を再考したいと考えています。郊外、都心、いろいろな場所に応じた「軒と縁」の形をみつけ、部屋と庭・人と自然のより良い関係をつくっていきたい と思います。
住まいの話題[572]執筆者
■奥野 公章(おくの まさあき)/ 奥野公章建築設計室



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