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アーキテクトルーム

■住まいの話題[573]:プロセスをデザインする
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新たなプロジェクトと出会う度に予見を持たずに、対話を重ねることを心がけています。新しいアイデアはこの中からこそ生まれてくると思っています。

建築をつくる過程では「形や空間をデザインする」以前に、「プロセスをデザインし、価値観を共有する」ということが大切で、プロジェクトごとの特性を活かした設計に結実させるためには、それに相応しいプロセスを考えることが最も重要だということです。基本構想から細部のデザインに到るまで、多くの判断の積み重ねが、建築のプロセスにはあって、そのなかで住まいや建築の特性が紡がれていきます。

そのプロセスでは意見交換や計画意図の伝達以上に、共感や合意形成がなされていくことが大切です。思っていた内容に結実したり、意外な方向に進んだり、時には結論に到らなかったり。設計チームのミーティングでも、現場協議でも、勿論クライアントとの打合せでも、こんな場面には良く出会うでしょう。

ここで大切なことは、結論に至るプロセスを考え、提案し、確認しあうことです。これこそが「プロセスを考える=プロセスをデザインする」ことであって、価値観が「共有」されている状態です。そうすれば「何が大切か」ということも見えてきますし、形や空間のデザインはそこから紐解かれていきます。
例えばある住宅2題を通して
旗竿形状の狭小地に明るく通風の良い住まいを依頼してきた建て主は、多くの雑誌を見て検討したうえで、私に連絡をしたとのことでした。でも、その次点で私に類似例の設計実績はありませんでした。彼が見ていたのは、商業地のバス通りに建ちながらプライバシーを保ち、開け放てる開口部を両立した住宅。敷地条件や特性も、家族構成も生活スタイルも違います。きっと、そこにあったのは相反する問題に創造性をもって対応し、魅力ある提案をしてくれるだろうという期待感と、依頼にいたるまでの面談で得た、お互いの信頼感であったと思います。
“ロ”ハウス:視界とプライバシーの
確保から生まれた、ロの字状の姿
FLAP HOUSE:フラップ状の
開口がもたらす光と開放感
商業地のバス通りに建つ住宅は、視線のコントロールから「ロの字」型の特徴ある姿となった住まいでした(“ロ”ハウス)。旗竿状地での計画では、閉ざされた土地でありながら、フラップのような形状の開口部を発想し、明るく開放感のあるスキップフロアの住宅になりました(FLAP HOUSE)。それぞれが相反する矛盾に向き合って「プロセスをデザイン」することから生まれてきたものです。

他の計画でも、こうした個性や特性が芽生えています。スペースの組み立て方、開口部のあり方などは勿論のこと、その場で感じられる家族の価値観や個性が投影された空間になっています。
新たな出会い、新たなプロセスのスタート
建築では実績の積み重ねによる、職能の熟度、熟練から生まれる魅力もあり、私のみならず、誰もが日々研鑽を重ねています。

でも、どんな実績にも必ず初めてがあるわけで、建築家の能力の発揮しどころは、計画特性ごとに相応しい発想を持って向き合えることだと思います。人も場所も計画ごとに違います。「同じものが無い」という意味では、常に「初めて」が存在しています。計画に潜む「初めて」を見つけて、そこに対話を加えていくことから、新たな可能性を引き出していけるのだと思います。

住まい、建築づくりは、常に人・敷地との新たな出会いからスタートします。これは新たなテーマに向けてのスタートであり、それこそが新たなデザイン、設計に向けてのスタートでもあります。そのスタートにおいて、確認されているのは結果としての姿ではなく、一定の条件を満たす約束に加えて、いまだ見ぬものに向かっての可能性と期待です。

いつも何かが「初めて」で、いつもも何かが「新しい」、快適で美しい住まいや建築が暮らしや価値観にフィットしながら生まれてくる、そんな「プロセス」を柔軟にデザインし続けたいと思っています。
住まいの話題[573]執筆者
■河野 有悟(こうの ゆうご)/ 河野有悟建築計画室



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