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アーキテクトルーム

■住まいの話題[575]:窓について考える
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窓の役割
建築の設計において、窓の造り方はとても重要な要素です。建物の形態が美しくできても窓の切り取り方がうまくできていなければきれいな外観にはなりません。建物の形態が美しくて、窓の切り取り方が上手で、故に外観が格好良く見えても、中に入った時にその窓からどんな景色が見えるか、どんな光が入るか、どんな風が入るか、それがうまく計画されていなければ住む人にとって全てが台無しとなることもあり得ます。

さらに内部に色々仕掛がある場合、たとえば吹抜けの場合なども、窓から入る光の加減は吹抜けの有効性を高める大切な要素です。窓はまた、断熱、音、防犯のウィークポイントになり得ます。そして窓は建物の内の人と外の人を繋ぐツールでもあります。そんなことを考えながら一つの事例を語ってみたいと思います。
bis
この建物における窓は、東京に建つ共同住宅という条件のため、玄関からのルートの他に、窓から道路に出られなければならないという法律を守る必要があり、また建て主からはできるだけ本物の素材を使うこと、格好が良いこと、防犯がしっかりしていること、という要望がありました。

一般的に窓の防犯のために一番効果があるのは、フィルム等をはさみ込んだ防犯ガラス、その次が格子、シャッター、雨戸等だと思います。しかし、防犯ガラスはかなり値段が高い、既製品のシャッターや雨戸はこの建物には似合わない、既製品の格子は出入りができない、その他諸々の要素を考慮した結果、木製格子を組んで開閉できるものを造りバルコニーの外側に取り付けることにしました。

建物が道路に面していて道路境界からの距離を確保できない、その上建物の他の面は隣家が迫っている。こうした条件の中で、なるべくプライバシーを閉ざして住みたいというこの建物には、格子が最適な選択でした。格子があることにより通行人の気配は感じるがプライバシーは守れる部屋になる。洗濯物をバルコニーに干しても目立たないし風も良く通り乾きもよい。おまけに日の光りによる格子の影が楽しい時間帯もある。
“bis:格子の影が楽しい bis:開いた格子とガラスブロック
を通してみる外部の違い
このように書くと、ただ格子を取り付けただけと言う方もいらっしゃると思いますし、造るのが大変なのは大工さんだけで、設計事務所は図面に縦横に線を描けばよいだけだろうと思う方もいらっしゃるでしょう。でも、格子を造るだけといってもなかなか大変な作業なのです。今回の格子を設計するポイントは防犯、風と光と景色を取り込む量の加減、そして製作コストとのバランスです。太い材料を隙間が少なくなるように並べて格子を造ると、防犯には最適ですが、風と光と景色が少なくなりコストがかかってしまいます。細い材料を並べて造ると、木製のために壊れ易くなり、隙間が多く見通しが良くなる反面、プライバシーが失われます。また、デザイン的にも壁面のコンクリートと木部の量のバランスが重要だと考えました。

設計事務所はこうした場合の最適なバランスを探すために、いろいろな格子を実際に見に行き調べた上でデザインを考えます。簡単に決めているわけでは決してないのです。
窓を眺める
一般的に窓の高さは掃き出しなら床から2m、腰窓なら床から90cm~2mあればよいとお約束事のように考えて造っているものが多いようです。よく考えられた建物の窓は、高さを天井までとり、天井と外部の庇が繋がることで空間に広がりを感じさせたり、空だけを見るように、あるいは地面の草花だけを見るように窓を造ったりしています。

その建物の、あるいはその部屋の独自の目的によって、全ての窓の大きさや位置を決めることが良いデザインにつながるのだと思います。皆さん、散歩をされる時には建物の窓に注目してみたり、友人宅にお邪魔した時はいろいろな観点からその家の窓を眺めてみたりすると、楽しいのではないでしょうか?
住まいの話題[575]執筆者
■川俣 信二(かわまた しんじ)/ 川俣信二建築設計室



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