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アーキテクトルーム

■住まいの話題[604]:外と中と
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住宅密集地での開口部のありかた
都市部で住宅を設計するにあたり、重要な課題の一つに、どのような開口部を設けるかということがあげられると思います。住宅密集地では多くの建物が敷地に余裕がなく、敷地いっぱいに建っており、そのような建物では、道路に面した壁面のみから採光が確保でき、他の面は隣地の建物と近接していてほとんど採光が取れないことが多いようです。このような敷地の場合、光を建物内部に取り込むため大きな窓を設けられるのは道路面に限られ、向いの建物や、道路を行き交う人の視線のため、結果として、ブラインドやカーテンを閉めきった状態の建物になりがちです。

大きな窓を設けても、近隣の視線を気にして開放できないようでは、満足できる居住空間とは言えません。住宅密集地での住宅の設計では、いかに光と風を取り込み、プライバシーを確保した窓を設けるかがポイントとなります。
閉じ方、開き方
最近竣工した二つの住宅は、共に住宅密集地にあり、敷地の一面のみが道路に面しています。敷地に余裕がある場合は、敷地の境界に高い塀を設けることによりプライバシーは確保できますが、敷地に余裕が無い場合はそうもいきません。視線が気になる開口部に目隠しを設けることがありますが、LDKや寝室などの比較的大きい窓にそのような目隠しを付けては、窓を開放した時も圧迫感があり、また建物の顔とも言えるファサードの印象にも大きくかかわるので、よく検討しなければなりません。

そこで今回の設計では、道に面した居室の窓の前に、外部からの視線を遮るためのもう1枚の壁を設けることにしました。
H邸:ダブルスキンとし、
ランダムな開口を設けた。
O邸:バルコニーの壁を高くして、
バルコニーを内部空間に取り込んだ。
H邸は、2階のリビングと3階の寝室に面した外部にバルコニーを設け、その前にもう1枚の壁を設けダブルスキンとし、壁にランダムな開口部のある計画としました。その結果、立つ位置によって、ランダムな開口から切り取られる部分が異なるので、外部と内部はゆるやかにつながり、自由な表情のファサードを得ることができました。

O邸は、敷地面積10坪・建坪6坪の狭小住宅で、隣地の建物との距離も1m以下という条件のため、採光の取り方と共に、内部空間に広がりを持たせることが課題となりました。そこで、あえて閉じることにより内部空間に広がりが生まれるような試みをしました。

リビングに面して奥行きのあるバルコニーを設け、そこに視線よりも高い壁を設け、外部からの視線を一切遮断しました。外部からの視線を完全に遮っているので、近隣を気にせず、窓はいつも開放しておくことができ、室外でありながら、バルコニーとリビングが一体の空間となり、より広く感じることができました。
敷地の環境に対応する
建物を設計する際には、敷地とその外側の環境を充分理解し、それを建物に生かすことが重要だと考えます。以前、敷地の南東に大きなケヤキの木がある家を設計しました。その建物では、ケヤキに面して大きな2層分の開口部を設けました。通常であれば、南面は夏期の日射が気になりますが、ケヤキの木が庇の役割を果たし、夏は日差しを遮り、冬は落葉し光を取り込むことができました。

自然豊かな環境では、その自然を取り込むように生かし、都市部の狭小敷地では、既成概念を捨て、閉じるからこそのかたちを生みだす。その土地の可能性を理解することにより、おのずと建物の造形が導きだされ、同時に内部空間に豊かさをもたらすことができるのではないかと考えています。
住まいの話題[604]執筆者
■檀上 新(だんじょう あらた)/ 檀上新建築アトリエ



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