Javascript is disabled.


アーキテクトルーム

■住まいの話題[606]:住宅という出来事を建てる
画像をクリックすると大きなサイズで見ることができます。
対話を通してイメージづくり
住宅を設計するという行為は、小説を書くという行為に似ているように思います。建築主から夢や希望を聞き、また生活スタイルや家族構成を調査して未来の建築主の生活を想像します。そして周辺環境や法規などの諸条件を盛り込みながら物語として再構成したものを“住宅という言語(=想像された建築)”に置き換える行為だと思います。

しかし、住宅は想像するものではなく実際の生活の場となるので、“住宅に置き換えられた言語(=想像された建築)”は、さらに時間と言う観念を取り込みながら“住宅という出来事(=体験する建築)”に創り上げて行くことになります。ここで出来事という言葉を使ったのは、そこで営まれる毎日の生活の中でいろいろな出来事を体験することになり、それぞれが一回性の出来事として建築主の記憶に残ることになるからです。

また、建築主にとって“家”は、心地よく暮すための“道具”であるとも言えると思います。“道具”であるからには持っているだけでは意味がありません。如何に使いこなすかが重要になってきます。そう考えますと、建築主は設計者と十分な対話を行い、建築主の頭の中にある抽象的な住宅イメージを、対話を通して如何に設計者の頭の中に具体的なイメージとして置き換えさせることが出来るかが、建築主にとっては最も重要な住宅づくりの鍵となります。

私が設計をお引き受けする際に心がけていることは、最初の提案をするまでに出来るだけたくさん建築主と対話を行うことです。ここでご紹介させていただく住宅も、十分な対話の中から将来の家族構成の変化に応じて住み続けていただける住宅を実現できたと思っています。
pop-eye house 外観:富士山に向かって
跳ね出したリビング・ダイニング
pop-eye house 内観:リビングから見た
ガラスの壁で囲われたキッチン
家族構成の変化に伴い住み続ける
pop-eye houseと名づけたこの住宅は、日吉駅に程近い閑静な住宅街に建設された2世帯住宅です。名前の由来は、2階のリビング・ダイニングを跳ね出し、晴れた日に顔を出す富士山を望んでいる外観になっていることから付けました。

建築主といろいろな対話を行い、その中から将来の家族構成の変化に対して柔軟であるべきだということと、奥様が大変お料理好きだということが主要なテーマとなると考えて設計を進めました。

まず2世帯であることを意識して、1階を遮音性の優れた鉄筋コンクリート造、2階をコストパフォーマンスの高い木造とし、上下階にご両親と夫婦の住まいを明確に分けた構成としました。2階はご夫婦のエリアにして、お料理好きな奥様のためにキッチンを建物中心に置き、お料理をされているときでも奥様が家族とコミュニケーションがとりやすい配置としています。ただしキッチンはオープンとしないでガラスの壁で囲い、視覚的には繋がっているけれど煙や匂いがリビングに出ないように配慮しています。

竣工当初の家族構成は、ご両親、ご夫婦と成人した息子さん一人の5人家族で、途中息子さんが結婚されてアパート住まいをしていた時期を挟んで、現在はご両親が他界されたことと、息子さんにお子様が生まれて戻ってこられたこともあって、新たな5人家族となっています。

最初は1階に息子さんとご両親(祖父母)が壁を隔てて暮していましたが、現在は息子さんの部屋とご両親(祖父母)だった部屋を繋いで、息子さん夫婦とお子さんの三人の住まいに変わっています。1階はコンクリート造ですが、一部にコンクリートブロックを採用して容易に撤去できるようにしていましたので、現在はその壁を撤去して繋げているわけです。

その他にも十分な対話をしたことで見えてきた細かいテーマを散りばめて、住みやすい住宅がご提供できたと思います。
住まいの話題[606]執筆者
■細村 研一(ほそむら けんいち)/ スタジオ・エイチ・プラス



ページTOPへ