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アーキテクトルーム

■住まいの話題[607]:住宅は何時建てる?
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何故、この時期に?
先頃竣工した二つの住宅(大口の家と北小金の家)には幾つかの共通点がある。共に広さは150㎡弱、構造こそ木造とコンクリート造の違いはあれども3階建てであること。そして最大の特徴は、趣味のスペースが占める割合が非常に大きいということである。何故その様な住宅が実現したのか?といえば、話は極めて簡単で、両方とも施主が独身男性だったからなのだ。その為、他の様々な要因に殆ど縛られず、自分の思い描く通りの空間を実現させることができた次第。

一般的に住宅を建てるきっかけは様々だが、大抵の場合、結婚をしたとか子供が出来たとか家族構成の変化に起因することが殆どである。これまで手がけた住宅もやはりそういった理由であった。さすがに最初は戸惑ってしまったが、独身者が家を建ててはイカンということは無い訳で、個人の自由といえば自由なのだ。しかし「何故、この時期に?」と聞かずにはいられない。すると、答えはこれまた簡単で「いい時期かな?と思って」ということらしい。この理由は両者共通。要するに、年齢的(30代半ば)に家を建ててもおかしくないでしょ?という具合に、当人達は至って普通の感覚で捉えているのだ。
家の条件は何から?
こうして目出度く設計は始まるのだが、真っ先に取組むのは核となる趣味の領域、まるで砂場での棒倒しの如くガッツリと取り分を確保する。次に寝床と居間、台所や食堂は「未来の奥様」に怒られない程度に・・・。でも、その収納量だと多分怒られますぜ? 大抵の場合、建て主というのは旦那様なのだが、発言権や決定権は圧倒的に奥様にある。我々設計者の鉄則は奥様を敵に廻さないこと! これに尽きるといっても過言ではない。

その「御言葉」と言えば、先ずは台所! そして食堂と居間の関連へと話は及び、次に取れるだけの収納といった機能面での要望が山の様に出てくる。当然子供の部屋も重要な要素となる一方、旦那の趣味?そんなのは後! 無くても良いです! というくらいの勢いで優先度はヒジョ~に低い。せめてもの抵抗か?はたまた奥様の優しさか?通路や居間の一角に辛うじて場所を与えてもらう旦那様のなんと多いことよ・・・。
大口の家:フェラーリを格納予定のガレージと
それを眺める為のギャラリー
北小金の家:書籍&CD用収納棚と
作業デスクで構成された3階スペース
要はその一連の流れが逆なのだ。しかし独身である以上、将来的に結婚は勿論のこと、子供を持つ考えもあるのだが、それはその時にまた考えればいいか? というザックリとしたイメージである。
結果どうなるか?
打合せ相手が一人だと、物事は早く決まる。押入?そんなの要らん!とか、逆にこちらが心配になって機能性を高めるよう進言する始末。誠にもって奇妙な打合せが繰り広げられた結果や如何に? 大口の家は1階に将来フェラーリを入れる車庫と車を眺める為のギャラリー、2階の居間・食堂は巨大な吹抜空間とし、3階は吹抜に面して部屋を二つ配置した。一応折れ戸で個室化は出来るが、独立性は極めて低い。

北小金の家は3階を丸々書籍・CD部屋とし、幅広のデスクを配置。スツールが置ける通路は図書館の様でもある。2階は寝床の他に居間や客間にもなる多目的部屋が一つ。将来は子供部屋になるかも知れないが、最初は扉も不要といった割り切り様。とにかく、独り身は他に気を使うこともないという訳だ。あくまでも今はね。
今後どうなるか?
年々晩婚化が進む社会状況の中で、独身者が男女を問わず家を建てることは不思議でないかも知れない。むしろ、その空間を理解し納得してくれる相手を探すという考え方もあるし、婚活の一環と言えなくもない。まぁ~、マイナスに作用しなければの話だが・・・。現在、市場を拡大しつつあるシェアハウスやペットと暮らす為の住宅など、家族を中心としない家作りという状況も考えられる。今回は未だ理性が働いた為にそれ程過激な結果にはならなかったが、今後人々の趣味趣向や生活環境の多様化が、住宅を作る上での条件設定を今以上に変化させ、より嗜好性の高い住宅が実現される可能性は十分にある。

家を建てるのは、老若男女、既婚未婚を問わず、思い立ったが吉日なのかも知れませんぞ?
住まいの話題[607]執筆者
■山崎 琢弥(やまざき たくや)/ 建築雑技団 一級級建築士事務所



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