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アーキテクトルーム

■住まいの話題[610]:小は大を兼ねる
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必要な空間とは
「大は小を兼ねる」という言葉があるように、家も狭いよりは、広い方が良いと思うのが当たり前です。

クライアントに「3LDKは何m2必要ですか?」と聞かれたことがあります。ごく一般的なファミリー世帯であれば、3LDKは70~80m2程度で、寝室や子供部屋などの個室は4.5~6帖程度。LDKは15帖~20帖程度のことが多いです。いわゆる、このnLDKというモジュールを限られた広さに入れ込もうとしても、都市部の住宅事情では難しい場合があります。

では、nLDKになっていなければ、家として不十分なのでしょうか? 実はそうではないと思います。住み手の生活スタイルによって、必要な広さや間取りは大きく異なり、一般的なnLDKのモジュールが合わない場合もあります。しかし、与えられた空間の中で暮らしていると、自分にとって必要な空間を意識するのはなかなか難しく、今ある広さ以下では生活できないような気になります。

家を作ろう、変えようと考え始め、nLDKのモジュールが納まらないと気付いた時、初めて自分達の生活に本当に必要な空間と広さと配置を考え直すことができるのではないかと思います。
小さな家、小さな部屋
昨年竣工した戸建住宅「野毛山の棲」は、敷地約10坪、建坪約6坪の狭小住宅です。この限られた面積では、普通の家で当たり前の「玄関、廊下を通ってリビングに入る」という悠長なプランにしていては、必要な空間がとれなくなってしまいます。玄関は必要か?廊下は必要か?他にもバルコニーは必要か?など、それらを何度も問い直しながら、少しの無駄も無いようにプランを練り上げました。
野毛山の棲:隣接する屋上と
一体化した開放的な浴室
O-House Renovation:リビングに面した
窓(左写真)を持つ約2帖の子供部屋
そこでまず、玄関とバルコニーを兼用してリビングに隣接させることで、これらの機能を一体的な空間にまとめ、リビングに広がりをもたせることができました。また、屋上に出るための通路を浴室の洗い場と兼用することで、浴室が屋上と繋がり開放的になりました。つまり、この狭小住宅では空間を兼用することによって、無駄を省き、狭い空間に広がりを持たせることができたのです。

以前手がけたマンションのリノベーションは、よくある奥行きの長い3LDKの住戸でした。3人家族で、子供も成長し、そろそろ生活スタイルがかたまった時期、今の空間に少し不都合を感じ始めたそうです。休日は家族皆で食事を作るのにすれ違えない台所。集まることが多いのに使用頻度の割合からして居間が狭く、逆に子供部屋はゆとりがある。

そこで、子供は居間にいることが多いので子供部屋を最小限に。またお父さんの書斎も増やしました。結果、でき上がった空間も3LDKですが、元々は6帖の個室が3室あったものを、6帖1室と2帖強2室にして、二つの個室を極端に小さくすることで、納戸を増やし、家族の集まるLDKを広くとることができました。子供部屋には、リビングに面し開閉できる窓やロフト風の造り付けベッドを設けて、立体的に空間を利用することにより、狭いながらも変化のある楽しい空間となりました。
自分にちょうど良い空間
広さにゆとりがある場合は、このような極端な選択をすることはなかなかありません。しかしこのように、各々の生活を見つめ直し、普通の家にある当たり前の空間を無くしたり兼用したりすることで、小さい空間でも、今までに無い新たな空間や豊かな時間を得ることができ、「小は大を兼ね得る」のではないかと思います。

もちろん、“大”には大の良い所や大にしか得られない魅力があるのと同じように、”小“には小にしかない魅力があるはずです。「立って半畳、寝て一畳」という言葉がありますが、狭小空間も設計の工夫次第で意外に広く感じるのではないでしょうか。
住まいの話題[610]執筆者
■檀上 千代子(だんじょう ちよこ)/ 檀上新建築アトリエ



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